垣一、R-18
ただヤってるだけ



















ピクン、と細い身体が小さく反応する姿が可愛い。垣根は純粋にそう思った。ただ正面から目を見て手を握っただけなのに、反射を切った一方通行は違和感があるといった感じで手を動す。触れた部分が温かくて、くすぐったくて、自分には似合わないと感じながら、それでも拒むことはできなかった。その仕草が可愛くて、垣根は触れるだけのキスをする。
「ン…」
目を瞑った一方通行の服の中に手を忍ばせる。身体が震えているのが伝わって顔を覗けば、下唇を噛みながら必死に声を押さえていた。今にも泣き出しそうに目尻にはうっすら涙を浮かべる姿はそこらの女なんかよりもよほど垣根の気分を高揚させていく。
「か、き……っン、ふァ……!?」
手探りで捜し出した胸の突起を転がすと我慢していた声が思わず漏れる。その開いた口に垣根が強引に舌を侵入させた。くちゃ、という唾液の混ざり合う音が一方通行の羞恥心を掻き立てて涙が零れた。含みきれなかった唾液も口の端から流れ出して人形のように白い肌を汚していく。垣根が唇を離すとキスだけでだいぶ卑猥になった一方通行の顔が目の前にあった。もっと、いろんな表情が見たい。それは単なる欲望だけでは説明のつかない感情だ。


(…愛、ってか?我ながら似合わねぇな)
「垣根っ…ちょっと……落ち、着け…っ…!」
「いいだろ、俺ら付き合ってんだし」
「そォじゃね…イイから、やめっ…」
「もしかして…初めて?」
「…っ……!?」


ありゃ、図星かな、と内心だけで焦燥感を隠して一方通行の首筋に舌を滑らせる。だとしたら自分は最低の行為をしようとしているのではないか。それでも、もう止まる気はしない。色も厚みも薄い胸を撫でていた垣根の右手が下に向かって移動していく。ズボンの留め具を外し始めたときに、いよいよ一方通行の抵抗は本格的なものになってきた。
「ほンと…やめ、ろっ…!」
「だから、付き合ってんだし。俺、お前のこと好きだし」
好きとか関係ないだろ、と心の中では思っていても抵抗は弱くなっていく。こんなに陳腐な言葉でほだされるのだから、一方通行も垣根のことを相当好きなわけだが、本人はまるで気付いていない。ほとんど抵抗がなくなったのをいいことに、下着の中にまで手は伸びていく。そのまま性器に触れて、もう片方の手で肌を包んでいたものを全て取り払う。普段、外気にさらされることのない股や脹ら脛は、ただでさえ白い一方通行の身体の中でもひときわ白いように思う。人間味のない白。それでも、体温を感じて、なぜか違和感を覚えた。
「…ってめ、ンなとこ舐め…ンっ、あ……ゥ…」
垣根が一方通行の性器を根元からゆっくりと舐めあげる。舌の先を使って、できるだけ唾液を這わせるように。先端をくわえ込むときだけわざと水っぽい音をたてることで、一方通行の動揺は更に広がっていった。
「やっ…ゥ、はっ……!やめ…ャ、だァ…!!」
「感じてんじゃん」
「……ちがっ…ァ…イヤっ…」
小刻みに震える一方通行を黙って見つめていた垣根だったが、あわてたように自分のベルトに手をかけた。
「ごめん…やっぱ、我慢できねぇわ…」
「……?」
直後、一方通行の口の中に肉棒が突っ込まれた。上手く呼吸もできないし気持ちが悪いしで、目を瞑ってただ涙を零し続けた。それでも、垣根のものだと思ったら自然と身体が動いてしまう。
(何やってンだ、俺…死にてェ…)
口から肉棒が引き抜かれたときには、一方通行はまともに動けなかった。身体的にではなく、精神的に。しかし、垣根は待たなかった。一方通行のアナルに指をあてがって、ゆっくりと中に押し込んでいったのだ。今まで、外部からの侵入などなかったそこは、垣根の指を拒むように締め付けた。もちろん、そんなことで止まるわけもなく入り口はどんどん広げられていく。一方通行は未知の感覚に困惑したが、どうしたらいいのか分からなかった。垣根を突き飛ばせばいいのだろうか。電極が切れたわけじゃない。ただ、この状況を本当は望んでいるのか、いないのか。そんな簡単なことが分からない。
そんなことを考えていたら、中に入ってきていた指を抜かれ、別のものが触れていた。

「挿れるから…」

まともな返事すらしないうちに、さっきまでとは質量も質感も違うものが無理やり入り口を裂いて侵入してくる。
「は…、ャ、あっ、あ、ゥ…っ!」
激痛で頭がクラクラしてきそうだったが、一方通行に抵抗するだけの気力は残っていない。奥まで入りきったときには、垣根の上着を掴んで呼吸をするのがやっとだった。その表情は苦痛、しかしそれだけではないような身体の震え。垣根がゆっくりと動き始める。一方通行は声を上げて痛みを訴える。
(痛ェ…い、てェ……なのに…なン、で…こ、ン…な…?)
ビクンッ、と、身体が意志と関係なく揺れる。一方通行もわけがわからないまま垣根を見つめていたが、無表情だった口元が緩んだ気がした。たったそれだけのことに、焦った。
「我慢、すん、な…よっ」
今までで一番強く奥を突かれれば、わけのわからない声を上げて身体中の体温がいっきに上がった。そんな気がした。そして、何も考えられなくてなった。
意識が続いているのかすら曖昧になっていく――。




「かァきね…くゥゥウン…」
「わ、悪かったって…。でもお前だってイっ――」
垣根の言葉が中途半端に止まったのは、一方通行の眼光が突き刺さったからだ。それは無言のまま『その先を言ったら潰す』などと、語っているに違いない。それくらい不機嫌なのだ。
「大体、自分の恋人に対して、あンな性犯罪みたいなことするか普通?つゥか男同士だし…初、めて、だったのに……」
毛布にくるまってブツブツと何かを言っている一方通行のことを垣根を暖かい目で見守っていた。孫の成長を実感するお爺ちゃん並みの暖かさだ。そして、ひとつの殻を破ったのであろう孫は自分の意志と判断で行動する。
「やっぱり殴らなきゃ気が済まねェ」
「ちょ、ま、孫っ!考え直せって!お前…自分の祖父を――っ!?」
「何の話かは知らねェが、」
すぅ、と、目を瞑った一方通行が息を吸う。ただそれだけで垣根の背筋には何だかも分からない直感が走り抜ける。分からないが、とにかく危険を知らせてくれているらしい。


「黙れ、クソメルヘン」


それは、怒りすら超越した笑み――。




20111115TUH


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