木一、ひたすら暗い
一通さんのメンタルがレベル0



















一方通行は黒い服に身を包んでいた。それだけ言えばいつものことだが、普段と違って今はフォーマルな黒だ。ワイシャツに真っ黒のスーツを着ている一方通行は、対照的な白い髪と肌のおかげでその周りだけ色が消えたようだった。ただ一点、紅い瞳を除いては。

「お星様になって見守ってます、ってかァ?笑えねェ」

いつもの敵意や殺意の代わりに憂いのようなものが伺える瞳には、かなり大きな木が映っている。そして、その根元には小さな花束。一方通行が置いたものだ。この木に思い入れがあるわけではないが、他に行くあてもないので適当に選んだのがここだった。どこでも良かったが、人目につくことは避けたかったのだ。服装とか、花を添える姿を見られたくないわけではない。大切な人を想って声をあげる当たり前の弱みを見せたくなかった。

「まァ…俺のせいだし…自業自得かも、なァッ…」

地面に膝をついて花束を見下ろした。見たから何かが戻ってくるわけでも、会話ができるわけでもないが。まるで懐かしいものを見つけ出したような微笑みが浮かぶ。でも、それはどこか切なげで今にも壊れそうな笑みだった。

「クソッ…馬鹿馬鹿しい…なン、で…俺が、」

押し殺したような声。奥歯を噛み締めたからといって、涙腺に変化はない。一方通行を恐怖の対象にしていた人間がこの光景を見たら驚いただろう。あんな化け物から、こんなに綺麗な雫が零れるものなのか、と。

「何で俺がッ…こンな、こと…ッ…」

誰もいないと分かっていても、自分の感情をさらけ出すことに抵抗を感じているのか声を抑える。それでも、意志とは関係なく一方通行の瞳からは大粒の涙が流れ続けた。もういない誰かを思って。二度と取り返せない何かを悔やんで。

「…ッ…あ、う……あ、ァあッ…」

子供のように声をあげて泣いてしまえば楽になったかもしれない。しかし、一方通行は絶対にそれをしない。いつまでも自分を痛めつけて、ひとりで苦しみ続ける。それしか償いの方法をしらないから。

涙でかすれた喉が呟いた誰かの名前すら、届かないまま風の中に消えた。




20111001SAT


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