真っ赤なハートのバルーンを握ったなまえは目をぱちぱちとさせながらルッスーリアの部下から受け取った手紙を読んでいる。長期任務で滞在中のパリからで、“YOU GO GIRL, LETS GET IT ON. ”と他人から見ればわからない文章だが彼女には何を指しているか明確であった。
今夜、ザンザスとのバレンタインディナーについての言及をしているのだ。色恋を重ねてきて、イベントごとを蔑ろにしてきたザンザスがなまえを誘って食事へいくだなんて、とルッスーリアは嬉しくて仕方がない。

「う゛ぉ、なんだそりゃ」

「ルッスーリアがくれたの、部屋に入れるかな」

「手伝うぞ」

30個ほどのハートがヴァリアー邸の高い場所を浮いている。スクアーロに暫く持ってもらいながらなまえはうまいこと部屋の扉にくぐらせた。自分のハートを誰かにあげるのかしら、という彼女の視線を感じたスクアーロは「どうだろうなぁ」と不敵に笑うだけだった。部屋にハートのバルーンを迎え入れた後はルッスーリアにお礼のメッセージを送りながらデートの準備を進める。約束の時間まではまだまだ余裕があるが、ゆっくりと自分を粧すこの時間が彼女は大好きなのだ。

「ルッスーリアからか」

「わ、ザンザスさん」

開け放したままの扉からザンザスが部屋に入ってくる。扉を片手で締めながらハートのバルーンを一瞥し、全身鏡の前で今夜着る服を選んでいるなまえの元へ歩み寄った。

「お仕事は?」

「少し休憩だ」

バレンタインデー、ハート、赤色、赤色の瞳。どんな赤よりも赤くて、命に溢れているものはこれ以外にないと思わせる程にザンザスの瞳は彼女を惹きつけている。なまえが彼の登場に驚いているのを知ってから知らずか、ザンザスは彼女の手を取る否や、触れるだけの口づけをすべく首を少し右へと傾げた。

「香水か」

「この間、ザンザスさんがくれたの・・・」

「そうか」

取られた手が解放されてるかわりに彼女の腰に腕が回されて抱き寄せられる。
なまえが香水をつけた場所を辿る様に耳の後ろの方から、うなじにつながる部分にザンザスは口づけをした。そしてそのまま、ゆっくりと下へ下へと唇を滑らせていく。

「わっ、あっ、ザンザスさん!」

「別にいいだろ」

滑っているのは彼の手だけではない。
くびれのちょうど真ん中に、なまえのくびれを象るように置いてあった大きな手が片方は腰の後ろに回り、もう片方はそのまま下へと滑っている。この手の行き着く場所を、ザンザスの望んでいるものをなまえはわかっていた。鎖骨に軽く口づけをされ、今度はまた唇に彼の色っぽい唇が当てられる。さっきとは違って、唇を啄むような口づけだ。

「ふっ、んむっ」

下唇を何度も啄まれ、彼から距離を取ろうにもそんな力はもうでない。
ぷっくりとした唇がゆっくりと開く様は十分にザンザスの瞳を燃やした。自分のプレゼントした香水を、自分の選んだ香りを纏っているだけでもたまらないのにザンザスは仕事を忘れて、彼女を燃やしてしまいたくなった。
なまえだって彼の手が置かれただけで、触れられただけで嬉しい。どこか緊張したせいできゅっと、胸が締め付けられるような気持ちになってしまう。もっと、彼の口づけを受ければ解放されるかもしれないと、思ってしまうくらいである。

「ひゃっ!」

なまえの可愛らしいお尻の始まり、平たい腰から下って丸みを帯び始めた所を彼は掴むようにして彼女をさらに引き寄せた。確かに彼の口づけにはうっとりしたが、まさか仕事を残しているのにも関わらず誘惑してくるとはなまえは考えていなかった。

「ザンザスさん!だめ!お仕事でしょ!」

ぐっと彼の胸板を押して離れようとする彼女を見てザンザスは楽しそうに笑うばかりだ。すっかり彼との口づけのせいで頬はほんのりと赤く染まり、彼女も瞳もどこか物欲しそうである。

「手厳しいな」

「だめ!ご飯食べて、きゃーーっ!」

ザンザスは彼女の言葉を遮るようにわざと、お尻の1番丸い部分をぎゅっと掴んだ。そして、いたずらな笑みを浮かべて部屋を出ていった。

そんなザンザスのハートはなまえのせいで真っ赤に美味しそうに熟れているし、齧れば二度と忘れられないほどにぴりりとして甘いだろう。もちろん、それを味わえるのは他でもないなまえだけだ。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -