あたしはザンザスと関係があった。別にマフィアでもなかったけど、ただ友達に誘われたパーティに行ったら彼がいたの。
結構好きだったよ、あの人って夜がすっごく上手なの。あたしを求めにきてるっていうのがすごくわかるの。とっても燃えたわ。

金払いもいいし、最高だった。なんでも奢ってくれたし、ほしいといえば大体買ってくれたの。ちなみにこのピアスもね。でも、絶対あたしには住んでる場所も昔の話も何も教えてくれなかった。
知らなくても別に問題ないって最初は思ってたんだけど、だんだん知りたくなるの。
それできづいたの、あたし彼が好きかもって。

あたし以外にも女がいるのは十分しってたわ。継続的に続いてたのはあたしと、きっとあと2人ぐらいじゃないかしら。
でも11月くらいから連絡が取れなくなって、送れてたメールも送れなくなっちゃったの。携帯変えたのかなーぐらいに思ってたら、女が出来たって、その友達が教えてくれたわけよ。もうすっごくムカついたわ!カチって炎がついたの。怒鳴り込みたいぐらいだったけど、彼とその女がくるっていう老舗レストランの開業100周年記念パーティにいったの。

あの男のことを知ってるのはあたし、彼がどんな顔で夜迫ってくるかも、朝起きたらなにをするかも、先に知ってるのは私っていう気持ちでいったの。なのにどうかしら、驚いたわよ。
全然あたしの知らない男の顔があったわ。
パーティ終わりにやっと会えたんだけど、階段を降りる時に自ら腕を差し出して婚約者と歩いてたの。正面玄関から出ないって予想して裏口で友達とタバコ吸ってて正解だったわ。

風がふいて乱れた婚約者の髪を、愛おしげに耳にかけてやって、額に口付けてた。
あんな小娘に負けたの?あたしの方がよっぽどセクシーで夜も昼も楽しませれるのに。

過ごした日々が走馬灯のようにはしって、崖から真っ逆さまに落ちる様な衝撃だった。

車にのるために、ドレスを持とうと婚約者は腕を離したら、ザンザスがすぐさまその手を取ったわ。
だって少しよろけたのよ、鈍臭い女でしょ。ありえない。

ほんとにこの小娘、この女のどこがって何度も思ってたら、ザンザスが何かを婚約者に囁いたの。
耳元にそっと口を寄せて、少し微笑んでたわ。その言葉が面白かったみたいで、婚約者は楽しそうな声で笑ったわ。周りも笑顔になるような笑顔でね。
支えるように婚約者の手を持ってて、ザンザスも口角を綺麗に上げて笑ってる婚約者を見つめてたわ。

愛おしげにね。

あの眼差しはあたしには向けられなかったわ。
愛がこもってる眼差しってあなた知ってる?すごく暖かくて、誰もが無条件に安心を覚えられるの。
もう、あたしの知らないザンザスよ。きっと今後も知ることのない眼差し。

春の太陽みたいに暖かくて、辛い時は冬の曇天をそっと切り裂く緩やかな陽の光みたいな愛情がこもった眼差しをあの男がしたのよ。
あんな百獣の王みたいな男がって悦に浸ってたあたしが馬鹿みたい。
きっと彼は彼女に全てを話してるんじゃない?ただの幸せなカップルじゃなかったわ。ストロングボンド、強い絆で結ばれてる印象受けたのよ。
ただ互いに骨抜きになってるって思えない。
たった一瞬なのにそれがわかっちゃうって、あたし過敏すぎ?でも絶対あんたもそう思うし、見てもあたしが勝てると思えないわよ。
もう、すごすぎて絶対勝てないと思っちゃったもん。

だって、その眼差しを知ってる婚約者は恐ろしいくらい幸せそうだったわ。
愛されている女の表情だった。わかるわよ、それぐらい。愛されてる女ってすごく可愛くなるし幸せさが顔から溢れ出るの。
聞いたことあるでしょ、幸せって隠せないものなのよ。

崖から落ちたけど、海に叩きつけられた様な衝撃だったわ。

あたしには燃え盛る欲望の眼差しだけ、ただの夏の貴婦人だったってことよ。






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