まあそれはそれは聡明なお子様でしたよ。
私はね、成人する前からずっとボンゴレ様のとこで働いていたんですわ。だから9代目様が自身の離れ離れになったというお子様、ザンザス様を連れて帰った時はひどく驚きましたよ。一体何があったか私ら使用人にはわかりません。たとえ、誰もが彼の子ではないのでは、と思ったとしてもそれは言えません。だってここはマフィアのお屋敷ですよ、馬鹿を言っちゃいけません。

ザンザス様が初めていらした年のナターレはとても盛大に行われましたよ。ええ、そうですとも。今でもはっきり覚えておりますよ。赤い瞳の底から、心の底からきらきらと輝いておりました。私もあんな立派なツリーは見たことがありませんでしたよ。綺麗ですねえ、と申し上げたらザンザス様は嬉しそうににっこりと微笑んで頷いておられました。
多くの使用人が疑いの視線を投げておりましたが目の前の幸福の塊に誰も意地悪は出来ません。それにね、暖かなクリスマスに頬を緩ませるザンザス様の愛らしいこと。私は彼に多くのクリスマスの魔法が訪れるように願いたくなりましたよ。ああ、あとザンザス様は一生懸命に勉強をされてました。夜遅くまで本をお読みになってるのもよくありました。なぜ知ってたかって?夜遅くに洗濯物を運んでるとよくザンザス様の部屋からは光が漏れてましたからね。時折、私にどんな本を読んでいるか教えてくれたんです。可愛らしい子でしたよ。何事にも一生懸命でね、外国語のお勉強も芸術も全て懸命に取り組んでいらっしゃいましたね。・・・でも、私のクリスマスの願いは長くは続きませんでした。

いつからか拳をしっかりと握りしめる様になって、9代目様の子であることを強く主張し始めたんです。成長に連なるものだったのかな、と思って私は彼の機嫌を損ねないように息を潜めるようになりました。朗らかだった子供らしいお顔はみるみる緊張で張り詰めたお顔になって、常に何かを警戒している様にも私には見えましたよ。それからお世話になったお屋敷から失礼させて頂いた数年後にクーデターがあったと聞いて私はやっぱり、と思ってしまったんです。
ザンザス様が婚姻されるまでどんな時間を過ごされていたかわかりませんが、きっと荒むような日々が多かったと思いますね。そんなことないのであれば、それはそれで私めは満足でございます。そうそう、9代目様のはからいでこの間お屋敷に行った時に久しぶりにザンザス様をお見かけしたんです。長いことお会いしてなかったのでね。でも、とても安心しましたよ。ザンザス様の隣にいらしたのは、とっても可愛らしいお嫁様でした。日本人だとは聞いておりましたが、あんなに朗らかな方だとは思いませんでしたね。顔の良し悪しじゃないんですよ、お聞きなさい。あの子はなまえさんと言うんです。なまえさんは一般の人でしょうね、毒気のない穏やかそうな娘さんでした。瞳に宿るのは麗しいほどの光ですよ、自分を信じている、愛を知っているものだけが放つことのできる光です。その光が人の顔を麗しく見せるんです。美醜で人を判断するようでまだあなたはお子ちゃまですね、ほほほ。
それに婚姻に至るまでのお二人のこともわかりかねますが、なまえさんがザンザス様を見た時の笑顔はとっても愛くるしい幸せにあふれた笑顔でした。私まで幸せになってしまいました。ザンザス様も私が最後にお見かけした時よりも随分とお優しい顔になっておられて。ああ、きっと彼の拳を開いたのはなまえさんなのだと私は思いましたね。はあ、本当に素敵な娘さんでしたよ。
この押し花の花はなまえさんからもらったんです。もっと言えば、きっとザンザス様が彼女を迎えにくる時に渡そうと思っていた花ですね。なまえさんは器用に一輪取って、私に渡してくれました。嬉しい事ですよ、ザンザス様にこんな愛溢れる方がおそばにいてくださって。末永く2人で手を取り合って幸せに暮らしてほしいですよ、私は。
まあもうこんな時間ね、遅いから帰りましょうか。


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