今日はナターレですが、屋敷にはなまえとルッスーリア、そして王子様しかいませんでした。
ディナーの準備の休憩がてらルッスーリアとなまえは洋服を選んでいました。小さなナターレのパーティであったとしても今夜は特別なのですから。ベルもいた筈ですが、早々に飽きてしまったようで、明日開けるべきクリスマスプレゼントを開けてしまい、自室でゲームに夢中でした。

「本当ベルちゃんったら自由なんだから

ため息をつきながらもルッスーリアはなまえのクローゼットの中の洋服を吟味します。
モミの木を思わせる緑のワンピースもあれば、黒のリトルドレスも。色鮮やかなカシミアのセーターもいいわね、と手を伸ばした横に小包と手がぶつかります。サングラスをしっかりと上げ直してみて見れば、小さく開いた袋の口から白いものが見えました。

「なまえちゃん」

名を呼ばれた彼女は驚いたように両手を口の前で合わせました。そこにいたのは羽を広げる孔雀よろしく、ヴェールを広げてみせるルッスーリアがいたのですから。なまえは恥ずかしそうな、でもどこか困ったように、いいのいいの、と言ってそれを取り返そうとしましたがルッスーリアがそれを許すはずがありません。振り解けない程の力で腕を引かれ、全身鏡の前まで連れて行かれてしまいます。

「ナニーがくれたヴェールね」

ルッスーリアはどこからかカチューシャを引っ張り出してはヴェールの上にそっとのせました。まあ、スイートパンプキンパイ!と彼は感動の声をあげます。綺麗に整えられた眉、繊細な睫毛に塗られたマスカラ、そして小鳥に口づけをされて頬を染めた少女のように赤い唇。たったそれだけの化粧なのに、十分なまえは美しく見えました。ドレスは着ていませんが、ルッスーリアには麗しい花嫁に見えたのです。

「私お花持ってくるから」

「ルッスーリア!」

駆け足で部屋を出て行く彼を呼び止めますが、彼は戻ってきませんでした。結婚式を挙げないことを残念だと思っていたのはナニーだけではなかったのです。なまえはふう、とため息をついて鏡で自分を見ようとしました。でも、上手く見えません。いっそのこと取ってしまえ!とヴェールの裾に手を伸ばしますが、上手く掴目ませんでした。金平糖の精がやってきたのでしょうか。でも、ヴェールを上げたのは、ルッスーリアでもなく、なまえでもありませんでした。


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