クリスマスマーケットの帰り、もしかして、と何か期待をしている自分を制するように冷たいポストの金具を回す。

夕暮れが始まる前で空は次第に橙色に染まり始め、降り積もったばかりの白い筈の雪はほんのり薄く桃色に色づいたと糖衣菓子のように見えた。錆びれてうまく動かない蓋を無理やり上へとあげ、手を入れれば夕刊と重厚な封筒が施された手紙が出てきたではないか。

ああ、今日もきた。

いつまでこの送り主はこの文通を、返事を書いていないので文通とは言い難いが、彼は書き続けるのだろう。そもそも今日で終わりかもしれない、と先程のように何か期待する自分をねむるは制した。
期待したところで彼は変わらない。変わらなかったから自分はあの場所から逃げ出してしまったのではないかと。

「どうして手紙出しちゃったのかしらね」

家に入り過去の無垢で幸福な自分に呆れたように呟く。言葉を返すものは誰もいない。
今でもはっきりと覚えている。クリスマスには会えないという恋人に、ザンザスに手紙を送りたいと申し出たのだ。彼から手紙で返事は返ってこなかったが、立派なオーナメントセットが届けられた。きっと彼の部下が手配をしたのだとはわかっていた、それでも彼女はクリスマスの魔法にかかっては夢を見た。


『ねむる
   柊の赤い実は誰の血だ』

謎ときのような手紙である。
よくわからない、とため息を吐いて棚に仕舞い込む。捨てれば良いのにこうしてしまってしまうのは何故だろうか。



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