度々乗るバスにザンザスがいたのだ。そして、席数の少ないバーでザンザスと、銀髪の麗しい彼の部下とまた相席になったのが始まりだった。いわゆる我々一般人とは違うというのは気づいていたし、事実、出会った時も彼らは任務で張り込む必要があったと聞いては合点がいったものだ。

一般人とは違う、それがねむるを深く引きずり込んだのだろう。恋人の正体は知られてはいけない、姿も見せれない。彼女とザンザスだけの秘密で、二人しか分つことの出来ない秘密であった。けれども分つにはあまりも激しくて、あまりも炎が大きすぎて、彼女の手は何度も火傷をした。そして、火傷をする度に彼はねむるを詰り、詰るにはあまりにも優しい口付けをするのだ。そうしてどんどん、彼女の感覚はおかしくなって、疲弊していった。深い海の底は寒いとわかっている。わかっているのに、時折雲の間から落ちてくる陽の光に触れては何度もその陽の光が永遠に差し込むように望んだ。彼女がその海の底から抜け出せばいいのにも関わらず。


『ねむる
  今年のイタリアは雪が降らないようだ』

彼から届けられる手紙はいつも短い。今日もそうだろう、と彼のサインを確認しようと手紙の下部まで視線を下ろしてみる。

『雪が降らなければ春も来ないかもしれない』

ねむるは眉をひそめた。雪が降らずとも春はやってくる。それが自然の摂理だ。それとも、彼の何かを見透かす力が自然のおかしさも見抜いているとでも?

相変わらずよくわからない男だと、かつての恋愛で得た痛みに胸を僅かにひりつかせながら手紙を棚の奥へと仕舞い込んだ。



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