談話室にいけば黄色い光が廊下へと漏れ出している。扉を開ければ誰かが付けっぱなしにしたのだろうか、クリスマスツリーに飾られたキャンドルを模したライトたちがぴかぴかと光っているではないか。
消そうと思い腰を屈めたが、ザンザスはそれをやめてソファーに腰掛けた。ため息を吐いて体をソファーへと沈めていく。

キャンドルライトの暖かな光がツリーの影を大きく伸ばしては木々に着いているオーナメントをどこか寂しげに見せた。決してクリスマスなどに興味はない。それでもじっと見てしまう理由をザンザスは何となくわかっていた。


『あなたは私の影を探しているんだわ。あなたの探している影は私にあった?どれだけ光を当てても、あなたが探している影はないわ。あったとしたら、あなたが作り出したのよ。
ザンザス、自分の不安事を私の中から見つけ出そうとしないで』

目の下に出来たクマを化粧で隠したのだろう、それでも消えきれていなかった。出会った頃よりもはっきりとしている鎖骨にザンザスは見覚えもなかったし、ねむるがあんな風に強く言い返してくることも予想外だった。だからといって彼女がいなくなってしまう事にもさほど驚きはなかった。

何度も何度も頭の中で繰り返し見ていた光景だったからだ。一体何が彼にそうさせているかわからない。人は離れていくものだ、そして、その考えを自ら実行しているのかもしれない、と思い始めたのはここ数年のことである。

ため息を吐いて、胸元に入れた筈の携帯を探したが何もない。薄くて小さな機械に何を期待しているというのだろうか。
そんなザンザスを嘲笑うかのようにキャンドルライトが二度ほどウィンクをしてから消えてしまった。



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