良くも悪くも肌を焦すような、溺れていくような恋愛だった。あの時ほど激しく燃え上がる事もなければ、あの時ほど誰かに溺れることもないだろう。そう、きっと何も知らないわからない、無垢な時代の恋だったのだ、とねむるはかつての恋人に想いを馳せた。

だからまさか、その男から、古典的な手段で連絡を得るとは思いもしなかったのである。

女一人で住むには広いし、一緒に住むには狭い、といつぞやの男に言われた家だ。古びていると言われればそれまでだが、ねむるはこの両親から譲り受けた家が好きだった。
つい先週に塗り直したばかりのポストを開け放したまま、愛する家へと続く道で立ち尽くしたままだ。

今のご時世に似つかわしい封蝋が施された手紙であった。封蝋に見覚えもあったし、自身の住所を、文字の列をなしている書き方にも見覚えがあった。

ねむるの胸を焦がしてならない、なおも小さく炎を燃やし続ける相手からの手紙だ。
急く気持ちをおさえながら、荒々しく封を切る。


『ねむる
     元気にしてるのか』

手紙の送り主はかつての恋人、ザンザスだった。
はるばるイタリアから手紙を出してくるには
あまりにも短い手紙で、久方ぶりの連絡がこれなのか、と怒り狂う女もいるだろう。しかし、彼女はそうではなかった。先程まで出来ていた息の仕方を忘れ、口元から短い感覚で白い吐息が溢れては辺りへと消えていく。

穏やかな年の瀬にはなり得ないようだ。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -