日に日に悲しい事が増えていったのも事実だが、彼と恋人で良かったと思った時もあった。ねむるはぼんやりとベッドの上に横になり、手紙を胸に抱えたまま頭の中のそこにしまい込んだ記憶を取り出す。つい先日に血色を取り戻した記憶は鮮明に動き出し、服の皺ひとつまで詳しく彼女に訴えかけてくるようだった。

口数の少ない彼に不安になる時こそあれど、彼の張りつめた表情が自分の前だけ和らいではこちらを優し気に見つめてくる眼差しが好きだった。ああ、そうだった、とねむるはずっと開けるのを忘れていた宝石箱を開けるように思い出しては少し苦し気な溜息を吐く。宝石箱だなんて嘘ではない。命のない砂漠の夜空に煌々と輝き続ける、命の存在を知らせてくれるような、何かと戦っては命を激しく燃やしている強き者の心臓のように思える力強い瞳なのだ。どんな赤よりも赤く、どんなに高価な宝石よりも永遠に輝くのは彼の奥底から燃え盛る信念が彼に力を与えては瞳を星の様に輝かせている。

その瞳に吸い込まれるように、ねむるは何度目を閉じただろうか。

そして、いつしか彼の瞳がねむるの奥底を覗き込むようになっては、幾度も幾度も見えない影を無理矢理見つけ出すようにザンザスは彼女に鋭い炎の灯りを見せたのだ。何かを焙りだすように。どんなに焙ろうとも何も出てこないのに、ザンザスは幾度もそれを繰り返した。勿論ねむるがそんなのに堪えれる筈もなく、彼女は次第に瞳を反らしていったのだ。

『ねむる
  会話がしたい』

返事を返さない彼女にザンザスも苛立っているのだろうか。彼は元来気の長い男ではないのだから。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -