音など一切しないはずだ。
音も立てずに雪の精達が空から降ってきてはせっせと白粉を振りまいている。十分寒い筈なのに、頬は熱くなり胸の中心から流れ出した血液が全身に広がらずに、胸元で留まっている気がして逆上せてしまいそうな気がした。ねむるは動揺したように、誰かに寄りかかりたいのか、あたりを見回しては手紙を見つめる。

昨日は友人の家に泊まったのでポストを開けれなかった。欠かさずに毎日読んでいた手紙を読まないのは不思議な気がして、そして、もうこなくなったらどうしよう、と素知らぬ不安も感じていた。自分はザンザスにまだ恋をしているのか、そんな呆れた気持ちを抱きながら。

「どうして」

彼から連絡が来ないように、ここに戻ってきた時はメールアドレスも電話番号も全て変えた。彼との思い出を後ろへ過去へ追いやるようにしたつもりだった。ザンザスと育んだ愛は嘘ではなかったが、ねむるは愛を分け与えるのに疲れてしまったのだ。分け与えてはあまりにも違った形で帰ってくるのだから。

彼を忘れようと時を過ごしては自分を癒してきた。ザンザスに愛をを分け与えるべく削った心に、ゆっくりと栄養を与えるように。前に足を向け始めた所だったのに、彼女の時はまたしてもザンザスの手紙のせいで動くのをめてしまった。

彼には一切の返事をしていない。あて所不明で彼の元に戻っていないからと言って、手紙の受け取り主がねむるとは限りらないし、もっと言えば読まれているかどうかもわからないのだ。それでもザンザスが送り続ける理由がいまいちわからないのだ。

眠らせていた筈の薄暗い思い出も血色を取り戻したかのように動き出した。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -