『ねむる
 随分寒くなっただろう』

白い息が立ち上る。降り積もったばかりの雪はふわふわと柔らかく、寝転んでも痛くない。ザンザスからの手紙を読み、遠くを見遣る。

時折、気のせいなのかわからないが見知らぬ異性の名前がザンザスの携帯の履歴に見受けられたのを思い出した。暗くなった部屋に見てくれ、と言わんばかりに青く輝く画面にねむるは魅入られてしまうのだ。知らぬが仏、それでも自分は彼に捨てられてしまうのではないか、と不安から画面が光っているうちに見てしまう事は度々あった。
けれども、彼女の知らない異なる言語を話すようで、メッセージの内容はわからなかった。ただわかるのは異性、であるという事だった。

仕事の相手であったのは確かで、双方に確かに恋愛感情がないのにねむるが気になり尋ねればザンザスはどこか不誠実に言葉を濁した。否定するには弱すぎる言葉を選んだり、肯定するには弱かったり。そして彼に疑問を問いかけてみれば、

『俺を疑ってんのか』

と、身の潔白を証明せずとも彼女に疑うことを悪だと言う様な態度で返すばかりだった。

『・・・ごめんなさい』

彼との衝突を、彼がそうやって彼女を責めることを彼女自身はあまり思い出したくなかった。ねむるの中ではまだ、つい昨日に起きた様な出来事で、思い出すといって遠くを見やるには近すぎる出来事のままなのだ。



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