「あと一時間はかかる」

そう言って、ザンザスは廊下から戻って来た。
ホテルの従業員が急いで追加の薪を用意したらしく、それを受け取ってくれたのだ。
切りたての薪は水分が少なく乾いている様で、暖炉の中に入れても大きく爆ぜる事はなかった。きらは大の大人が2人くらいは横になれそうなソファーで、猫のように体を丸めている。

「こんなに気温が下がるなんて」

きらは出発の前に見たスマートフォンの画面を思い出した。
あの時はこんなに寒く、北風も吹くなんて言っていなかったのに、と。横を向いているせいで髪の毛が頬からソファーへと滑っていく。髪の毛のカーテンが視界に生れたが、その間からきらは暖炉の炎を透かして見つめた。寒くて、手もコートの中から取り出したくないという気持ちなのだ。

「雪が降らないだけましだ」
「まあ、そうですけど」

雪が降った時に部屋がどれ程冷え込むか彼女はよくわかっていない。
でもきっと、北風でこれくらい寒いのだからもっと寒いだろう。そう考えている彼女の髪の毛をザンザスが掬い、耳にかけられる。浴室の方で手を洗っていたのかと思いきや、いつの間にかソファーに腰かけていたらしい。ちらり、と彼の方へ視線を投げると赤い瞳に視線を絡めとられてしまった。先程彼の瞳の中で燃えていた赤い何かがより紅く見える。それが暖炉の炎のせいなのか、彼自身の何か欲望なのか。

「同じだ。夢と変わらない」
「え?あ、っあ」

耳の直ぐ下に口づけをされる。一瞬の熱っぽい口づけに惑わされると、今度は唇を奪われてしまった。驚き固まった彼女の唇を性急にほどくように、がぶり、と甘く上唇を噛まれる。ひ、と唇が薄く開いた瞬間、彼は器用に自身の分厚く大きな舌をきらの小さな口の中に滑らせこんだ。

「んぅ、ぁ、ん」

 どんな夢を見たと言うのだろうか。
聞こうにも、彼に覆いかぶさられては聞けない。きらはただただザンザスの口づけを受け入れるので精一杯だ。久しぶりに会ったのに、こんな何か腹の底で眠っていた欲を目覚めさせるような口づけとは。勿論ザンザスはそのつもりなのかもしれない。きらだって別に、何も起こらないとは思っていなかった。でもまさか、こんなに早く彼からアクションを起こされるとは思わなかった。
いやでも、彼の事だからこういう口づけをして終わりかもしれない。変にこの先を期待するのは、と彼の口づけに翻弄されながらきらは考えた。けれどもこれは終わらなかった。

「こ、ここで?」

ザンザスの手が彼女の背中に回り、体をソファーから離すように促される。
ワンピースのファスナーに力がかかった事で彼女はようやく理解した。

「寝室が良いのか」

冷えるぞ、と言いながら彼はきらのワンピースを緩めた。
ウエストと生地の間に隙間が生まれたのを感じながら、彼女はうーん、と悩んだ。

「少し考えてろ」
「えっ、きゃ、あっ」

きらの骨盤が彼によって掴まれては、薄手の黒いタイツを下着ごと脱がされてしまった。まだ温まりきっていない空気が肌に触れ、彼女の爪先が丸まる。しかしザンザスはそんなのお構いなしに、彼女の閉じた両足を裂くように自身の体をねじ込ませた。きらの薄く柔らかな内太ももに歯を立てながら。

「ひゃ、あ、ゃ、くすぐった、んっあっ」

胸を揉みしだくことはなく、彼は自身の下半身をぴったりと彼女の下半身にくっつけては再び口づけをし始めた。寒さで委縮してしまった彼女の体を、体の中で眠っているものを大きくさせるように、深い深い口づけを繰り返した。きらは身を捩りたかったがそれは出来なかった。何せザンザスの大きな手が額に添えられているのだ。

ただただ彼にされるがまま、じっと口づけに応え続けていた。
でも恥ずかしいから下半身くらいは、とそこを反らそうにも反らせない。ぐり、と彼の硬くなったものが臍の下を押さえつけている。そして時折、ザンザスは行為を想像させる様に下半身を動かした。全てを知っている訳ではない。知らなくとも、きらの中でぱちぱちと鋭く熱いものが芽吹いていくのは十分だった。

「ざ、ザンザスさん、あの」
「なんだ」
「ワンピース、よごれ、ちゃうから・・・」

きらは腰を僅かに反らしながらザンザスに懇願した。
これ以上はだめだ、と思ったのだ。口づけだけで、ザンザスが時折腰を動かすだけで彼女はすっかり濡れてしまったから。

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