思わずうっとりとしてしまった。
漆黒の海のように豊かな黒髪は星が輝きそうだし、上唇の山のあたりに乗せているハイライトは彼女の美しさを際立たせている。

「ディーノ!あなたにこんな可愛いお友達がいただなんて」

その唇をわざと噛んで抗議をすれば、一緒に動いた手の甲には幾何学模様のタトゥーが見えた。

「お前にメールしても何も返してこなかっただろー」

「可愛い子がいるとは言ってないじゃない?」

「そうか?」

場所はボンゴレ邸のテラス、きらはザンザスの用事に付き添いで来た所この2人と出会ったのだ。彼らも9代目に用があるらしく、順番が来るまでテラスでコーヒーでも飲もうとなった次第である。

「ナバイアがスーツを着るなんて珍しいな」

「可愛いでしょ。お気に入りのブランドの新作よ」

ナバイア、と呼ばれた彼女はモーヴピンクのパンツスーツに身を包んでいる。
ハイウエストタイプのスラックスのせいでのしまったくびれは強調され、胸が豊かであるのは勿論、お尻はぷりんとしたオレンジピーチのようだ。きっと触ればマシュマロよりも柔らかくて,
彼女の肌を噛めばココナッツの味がするかもしれない。


「私、いつもアメリカにいるのよ。こっちでリゾートホテルでもやろうかと思って帰ってきたんだけどだめね。アメリカの方が儲かりそうだわ」

「ホテルのお仕事なんですか?」

「そうよ、ラスベガスに2つとマイアミに3つ。どっちもカジノが出来るのよ。やったことある?」

「ないです」

「あら、教えてあげるわよ」

ガールズトークの邪魔をするな、とナバイアがディーノを肘で押し除ければ彼は大人しくテラスから部屋へと戻ってしまった。こうしてマフィアのドンを扱えるのは彼女くらいだろう。転びそうなディーノにヤジを飛ばすナバイアにきらは再び視線が釘付けになった。手首には人の目が描かれ、黒い涙が描かれていたからだ。

「・・・痛くないんですか?」

「あら、全然よ。あの機械の音が恋しいくらい。背中にもここにもあるわよ」

ここにも、と言った場所をブロンズ色の爪が辿った。レースキャミソールには緩やかと波が左右に立てられる。心臓から臍の下近くまで、ただ指を滑らせているだけなのに、
決して触られていないのに、わざとらしく自分の肌をいやらしく触られたような気がしてしまったのだ。なんなら、ナバイアにそのままぺろりと胸の丘を舐められてもおかしくないと思わずにはいられなかった。

「どんなデザインか見てみる?」

きらは自らわざわざ誘惑をして行為を促す花のような女ではない。ナバイアはわかっている。じりじりと可憐な茎の元へ歩み寄り、体をくねらせて敷き伏せてまだ無垢な花を唆してしまいたい、と思っている。いたずらな笑みにきらは笑い、プールに入るってこと?と目の前にあるプールに視線を向けた。

「いいわよ、そこでも。でも2人っきりじゃなきゃ。私達だけの秘密にするの」

ナバイアの瞳に浮かぶ星は小さくも燃えているし、その星が溶けだして蜂蜜になりそうなくらいだ。

「でも、わたし、」

「きら」

蛇の麗しい手が近づくところだった。知らないうちに呼吸が浅くなっていたきらを救ったのはザンザスであった。ひんやりとしたシルクのワンピースを通して彼の体温が伝わる。ナバイアは一変して大きく目を見開いても言わない。

「何の用だ」

人前で滅多にくびれや腰に手を置いてこないザンザスにきらは戸惑うが、ナバイアが面白くなさそうに舌を出してみせる。

「やだ、ザンザス。あなたのガールフレンドなの?」

「カッ消されてぇのか」

「嫌よ!でもきら、アメリカに来るときは連絡して。とっておきのお部屋を用意してあげる」

ナバイアは急いで名刺を出してきらに握らせ、慌ててチークキスをして足早に立ち去ってしまった。先ほどまでの出来事が嵐の様である。

「ここに連れてくるのが間違いだったな」

「どうして?」

「誘われたのに気づかなかったのか」

気付けばきらのくびれにはぐるりとザンザスの腕が回っていた。彼の顔を見上げれば、どことなく不満そうである。

「・・・何に?」

思い当たらない、とは言い切れないときらは口をつぐんだ。
言われてみればやけに熱っぽい眼差しを向けられていたかもしれない。それに口付けを受け入れてしまう姿を想像してしまったし、レースキャミソールの下にある装飾を見せられてもおかしくなかったかもしれないと考えた。

「でも、すごく綺麗な人だとは思います・・・」

同性から向けられた熱情に戸惑っているのかナバイアの色気に当てられたせいなのかきらはすっかりわからなくなった。ただ確かなのは自分のくびれに触れている男の手に力がこもり始めた、という事だけである。

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