小説 | ナノ
POCKY GAME
 花の女子高生というものは、世間の流行の最先端を築いていると言っても過言ではない。ちょっとした流行のものにはとても敏感で、熱しやすく冷めやすかったりする。驚く程切り替えが速い生き物なのだ。
 そんな女子高生たちは、流行だけではなく、イベントごとも大好きだ。体育祭、文化祭、それらの打ち上げやハロウィン、クリスマス、バレンタインにホワイトデー。一年の中にありとあらゆるイベントがある。それらは街を歩けば「もうすぐあのイベントがあるのか〜」とわかりやすく店頭にでかでかと広告を飾り付け、商法のひとつとして利用されている。
 今日もそうだ。
 11月11日。じゅういちがつじゅういちにち。一瞬、耳で聞いただけでは「何の日だっけ?」と思わず聞き返してしまうが、字面で見ればすぐ様納得してしまう程日本では浸透したイベントの日であった。
 クラスメイトの女子たちがこぞってそのイベントにはかかせないあるものを持ち寄り、騒ぎ立てているのをハルとふたりで目にした。少しだけ、お裾分けを貰ったりもした。渚なんかもこういうイベントごとは大好きな奴だから、きっと騒いでいただろう。残念ながら今日は部活が休みの日であったので、渚に会ってはいないが。
 俺の可愛い彼女もこういうイベントごとが好きなことは把握していたつもりだが、まさかこんなことになるなんて夢にも思っていなかった。
 そして現在進行形で俺は、大層困っている。



「先輩、ポッキーゲームしましょう!」
 学校帰り、今日は部活がないのを良いことに、久しぶりにお家デートしようという約束をしていた。学校から俺の家は電車を使わず歩いて行ける距離なので、場所は迷わず俺の家ということになった。
 好都合なことに、俺の家族は皆こぞって近所に住む母方の実家へと行っており、恐らく帰ってくるのは夜遅くになるであろう。
 自宅に到着し、飲み物とお茶菓子を持って行くので先に部屋へ行くよう江ちゃんに行った。適当にあったそれらをお盆に載せて二階の自室へと向い、扉を開けると、江ちゃんはガーネットの瞳をキラキラと輝かせてテンション高くそう言った。
 少なからず予想はしていたが、思わず頭を抱えてしまう。
 家族のいない家、イコール、彼女とふたりきり。それは言わずもがなそういうことが有り得る状況である。俺だって健全な男子高校生だ。それぐらい考える。むしろ考えないほうが健全じゃないと言い張りたい。
 彼女とは既にそういう関係にまで進んでいるため、気にしなくても良いと言えば良いのだろうが、若さ故か彼女を無理させてしまうことが多く、なるべく回数がないように心がけているのだが……既に今日もポッキリと理性を折られてしまいそうだ。ポッキーだけに。いやいや、少し落ち着こう。
「ご、江ちゃん……?本気?」
「もちろんです!一度で良いからポッキーゲームしてみたかったんですよね〜。どんな感じなのかなあって、ずっと気になってたんです!やっぱり全部食べるのって難しいんですかね?」
 江ちゃんは俺の気持ちなど知りもせずうきうきガサガサと真っ赤なパッケージを開ける。彼女は本気のようだ。
 はぁ、とひとつ、大きな溜息を吐き出し、お盆をテーブルの上に乗せてベッドの端を背もたれ代わりにしている江ちゃんの隣に座ることにする。
 こうなった以上腹を括るしかない。後で江ちゃんに何かしら言われても俺は悪くない。絶対に。
「じゃあ先輩、いきますよ!」
「はいはい」
 ニコニコとポッキーを片手に下から俺の表情を伺う彼女につい苦笑をもらす。彼女が楽しんでいるのだから、まあ、いっか。
 ただ、こんなことを他の男にしないためにもキツく言わねばと頭の隅で思った。
 チョコがついている側を江ちゃんはパクリと銜え、少し照れくさそうに「んっ」とこちらへと向ける。
 俺も応戦するべく、左手を彼女の華奢な肩に、右手を白くて丸い頬に添えて、ポッキーを銜えた。
 ――近い。
 江ちゃんも意外と近いことに驚いたのか、大きな目をぱちくりさせた後に、頬を薔薇色に染め上げる。そういう初々しい反応が愛しくてたまらない。
 恥ずかしくて口を動かすことが出来ない江ちゃんに向かって、俺は容赦なくポッキーをぽりぽりと食べていく。あっという間に距離は縮まり、あと3cm。2cm。1cm。
 そのままがぶりと江ちゃんの唇に食らいつく。「んんっ」と彼女は苦しそうに声をもらし、両手で俺の胸を押してくるが、離してなんかやらない。逃げられぬように肩に添えていた左手を後頭部へと回してしまう。
 江ちゃんの唇を無理矢理舌でこじ開け、咥内を荒らす。おずおずと戸惑う舌を捕らえて絡めれば江ちゃんの眦から快感からによる涙が溢れた。俺の興奮を煽るこの表情がだいすきだ。
 上顎をスリスリと舌先でなぞってやれば彼女はうっとり目を細める。これは彼女が落ちた証拠だ。
 スルリと頬に添えていた右手で耳の裏側をなぞってから、彼女のワイシャツに手をかける。ひとつひとつ、焦らずゆっくりボタンを外し終えてから、唇を離す。
 江ちゃんの口端から唾液が溢れており、とてもいやらしい。そっとやさしくその唾液を舐めとってやると、くすぐったそうに身を震わせた。可愛い。通学途中によく見る白猫みたい。
「まこと、せんぱい」
 名前を呼ばれながらくいっとシャツの裾を引かれて「なあに?」と問えば、江ちゃんは熱を孕んだ視線をベッドへと移す。
 くすり、と小さな笑みをこぼし、彼女の要望通り、ベッドへと移動するため彼女を抱きかかえようとした時、カサリと手に何かが当たった。先ほど江ちゃんが開けたポッキーの袋だ。
 それを見て俺は良いことを思いつき、江ちゃんをベッドへ移動させた後、それを拾い上げた。
「ねえ、江ちゃん」
「は、い……?」
 ベッドの上ではだけたまま俺を待つ江ちゃんに問いかける。目がとろん、としていて、はやくはやくと俺を煽る。けれど、今日はせっかくのポッキーの日なのだから、もう少し楽しみたい。
「俺と、ポッキーゲームしよっか」
「へ?」
 きょとん、と瞳を丸めながら首を傾げる江ちゃんに俺は袋の中から長細い一本のポッキーを取り出した。



「せんぱ、これ、恥ずかしいです……っ」
「ほら、ちゃんとして……ん、可愛い」
「うぅっ、も、やです、これっ、んっ」
 江ちゃんの谷間にポッキーがずりずりと擦れる。彼女の体温で溶けてしまったチョコが白い肌にベトリと付着しており、俺は生唾を飲み込んだ。
 ――江ちゃんのここに、ポッキーを挟んで擦るから、江ちゃんはこのポッキーが折れないようにちゃんと挟むんだよ?
 彼女は恥ずかしそうにしながらも俺の言う通りに両手で胸を寄せ、ポッキーが落ちないように挟んでいる。俗に言うパイズリというやつだ。挟まれているのは残念ながら俺のじゃなくてポッキーだけど。
 この卑猥な光景を見たくないのか、彼女は必死に視線を逸らしている。それが気に食わなくて、俺は彼女の視線を追いかけるように顔を覗き込みながらもポッキーを動かす手は休めない。
「江ちゃん、ほら、ちゃんと見て」
「い、いや、です」
「だーめ」
「ひゃあっ」
 頑に視線をこちらに向けようとしない彼女に痺れを切らして、江ちゃんの小さな手でギリギリ見え隠れする立ち上がった胸の先端を指先で弾いた。愛らしい声を上げ、身を震わしながら、彼女はやっとこちらへ視線を向ける。
「うん、いい子……あー、もうチョコ溶けてなくなっちゃったね」
 胸の谷間にドロドロに溶けたチョコを見ながらそう言う。チョコが禿げてなくなってしまい、ただのクッキーだけとなったそれをぽりぽりと食べ、それから「いただきます」とチョコを舌先で舐めとった。
「あ、や、せんぱ、くすぐったい」
 いやいやをするように首を左右に振る江ちゃん。ご褒美を上げるように、チョコを舐めとりながら指先で乳首をいじくりまわし、空いた片方の手をスカートの中へと忍ばせる。下着のクロッチ部分に触れると、そこはしっかりと濡れており、たぶんシミになっているだろう。
 俺も大概だが、江ちゃんもなんだかんだエッチな子だ。俺がそうしたということもあるが。
 可哀想なぐらい快感でビクビクと震える彼女にほくそ笑みながら、クロッチ脇から指をナカへと挿入する。そこは想像以上に湿り気を帯びており、下着がなかったらお尻の方まで愛液が伝っていただろうと思う。
 下着を脱がし、ベッドの隅へと適当に投げる。その手で、また一本袋の中からポッキーを取り出した。
 今度は何をされるのかと、恐る恐るこちらを見ている江ちゃんを安心させるように、小さな頭を撫でるとうれしそうに目を細めた。妹気質な彼女はこういうことをされるのが基本嫌いなようだが、こういう時は素直に甘えてくれる。こんな姿は俺しか知らないだろう。いや、頭を撫でるだけなら凛も知っているか。
 足の間に体を入り込ませれば必然的に彼女は大きく足を開くことになる。パックリと開いた秘部にふぅっと息を吹きかけると彼女の鈴の音のような愛らしい声が小さく室内に響いた。
 喉で小さく笑い、手に持ったポッキーの先端を彼女の一番敏感な陰核に擦り付ける。
「あ!や、ひゃあんっ、」
「可愛い。ここ、ぷっくりしてるよ?気持ち良いんだ?」
「ああっ、う、きもち、」
 思考までも蕩けてきてしまったのか、彼女はもう反抗するような言葉を吐かない。変わりに甘えた声で素直な言葉を吐息混じりに呟き、腰をくねらせる。
「すごいよ、江ちゃんのここ。熱いからチョコも溶けてきちゃったよ」
 綺麗にしなきゃね。
 そう囁くように言うと、江ちゃんは慌て出した。
「や、だめ!せんぱ、ひゃああっ!やだぁっ」
「ん、美味し、」
 江ちゃんの愛液がたっぷりとついたポッキーをものの数秒で食し、彼女のいやらしい液と溶けたチョコでドロドロになってしまった秘部へと顔を埋めた。じゅるじゅると音を立て、チョコと共々愛液を啜ると江ちゃんの両手が俺の髪を掴んだ。
 彼女は引き離そうと必死なようだが、腰はしっかり俺に押し付けるように動いている。体は正直だ、とは正にこういうときに使うのだろうと熱に浮かされながらも思う。
 こりこりになってしまった江ちゃんの陰核を舌先で細かに弾いたり、入り口周りを舐め回すことに夢中になっていると、だんだん彼女の喘ぎが大きくなり、背を反らして彼女は達してしまった。
「江ちゃん、大丈夫?」
「ふ、あ、だいじょうぶ、です」
「うん、美味しかったよ。ご馳走さま」
 頭を撫でてやりながら、小さな唇にちゅ、とキスを送ると、彼女から舌を絡ませてきた。理性はとうの昔に崩壊しているようで、いつもとは比べ物にならないぐらい大胆だ。
 煽りに煽られ、俺もそろそろ我慢の限界だった。張りつめた自身が窮屈そうに下着とズボンを押し上げている。いい加減解放してあげないと。江ちゃんも奥が疼いて仕方ないようで、自ら俺の腰に秘部を押し付けてくる。完全に落ちた彼女は本当に可愛くて仕方ない。
 唇を離し、早急にベルトをゆるめ、下着から取り出した自身に手早くコンドームを被せる。額から溢れた汗が、彼女の胸元を濡らした。
 そういえば俺ばかり食べていて、彼女は未だポッキーを口にしていなかったっけ。
 期待に疼いた視線同士を絡め、江ちゃんの秘部に自身を押しつけ、言う。ご褒美、あげなくちゃね。
「ご褒美に、俺のポッキー食べさせてあげるね」
「あ、や、あああっ!!」
 たまには、こういうイベントに乗せられるのも、悪くないかもしれない。
 熱い粘膜に包まれながら、俺は彼女にチョコレート味の口づけを送った。
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