ピンキリスイカ割り大会
背景に広がるは、水しぶきが眩しい
「海!!」
真上にはこれでもかと照り付けてくる
「太陽!!」
暑さが気持ちいい
「夏だぁぁああ!!!」
マルコは賑わう海辺で一人海パン一丁でそう叫んでいた。
「…おい、そこの万年真夏日。」
そんなマルコにジャンルカが呆れた声で近づいてきた。
「あっ ジャン! …!! 買ってきてくれたんだねっ!!」
マルコはそう言いながら、こちらに向かって歩いてくるジャンルカの手元を見てまた目を輝かせる。
「お前が買ってこいって言うから。ほら、スイカ。」
「あは。ありがとうっ」
ジャンルカの手元には緑の玉に黒い波線が綺麗に描かれたあいつ、スイカだ。
マルコは早速ジャンルカの持っているスイカを疾風の如く奪い取ると、「よし、これで準備万端だね。」といい太陽にキラリと光るスイカを灼熱の地面にぽんっと置いた。
ジャンルカはそんなマルコの一連の行動を見て、首を傾げる。
「おい、マルコ。何やってるんだ? スイカ、食べるんじゃないのか??」
そんなジャンルカの疑問にマルコは待ってましたと言わんばかりの笑顔で答えた。
「ふっふーん…。夏の海と言えばあれしかないよ、ジャン。」
「却下。」
「そう! きゃっ… 早いよ?? ちょっと早過ぎるよ、ジャン。」
「だって、どうせお前の事だからスイカ割り大会とか言うんだろ。」
ジャンルカが再度呆れた顔で言うとマルコはワナワナと体を震わせながらジャンルカに飛びついてきた。
「うおっ??!」
「なんでっ、なんで分かったの、ジャン!! 何、天才?? 君は天才??」
「…はなっれろっ!! 分かるに決まってるっ、馬鹿なお前の考える事っなんかぁっ!! はあっ…」
「そっ…そんなこと言われると照れちゃうよ…」
イタリアの海岸に鈍い音が響いた。
「じゃっ、1番はジャンね?」
「うう……」
そして、結局スイカ割りをやる羽目になってしまいジャンルカはがっくりと肩を落とした。
しゅるっと目の前に白い布をつけられ、手にバットを握らされる。そして、ぽんっとジャンルカに背中を押された。
「出発だ、ジャン!! あ、違うもっと右。あ あ 左 左!! 真っすぐ!!!」
目の前が真っ暗で何も見えないため頼りになるのはマルコの声だけ。
フラフラと指示に従い、あるはずのスイカに向かってバットを振り上げた。
「そこだっ!!」
「よしっ」
ばすんっ!!!!
振り上げたバットの着いた先。
それは。
「……砂」
「なんでだ??」
もうもうと白い砂がジャンルカの周りを舞っている。
スイカはというと、2m先くらいにぽつんと置いてあった。
「…ぜっ、全然違うじゃないか!!」
「あはっ、あははははっ!!」
「笑うなよっ。……ははっ」
スイカは叩けなかったけど、なぜか笑みが零れた。
そしてそんな二人を楽しそうに見守るかのように真夏の太陽はまた一段と暑さを増す。
じりじりと照り付ける太陽が今はとても気持ちがいい。
多分、君となら何をやっても楽しいんだ。
End