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君といたあの夏の日

「あっついいい!!!!」


日本各地が30度を越える真夏日の中、ここ雷門町もジリジリと太陽がこれでもかという程照り付けている。
半田真一もそんな暑さにぐったりと畳の上で倒れていた。


「…今日は本当に暑いね。」


その隣にいるのは松野空介。
半田の恋人だ。


「もーなんでこうゆう時に限ってクーラー壊れるんだよ。ありえねぇ!!」
「あー半田うるさい。暑苦しいから黙ってくんない。」
「うぜぇー…」


今日は夏休みの宿題をやるという名目で半田の家に集まったのだが、生憎半田の家のクーラーが壊れてしまいこの猛暑の中扇風機で過ごすという生き地獄を味わう羽目になってしまったのだ。


「はあ…なんか半田、寒くなるようなことやってよ。」
「無茶いうな。」
「ケチ。ねぇーアイス食べたい。」
「じゃあ、買ってこいよ。」
「買ってきて。」
「やだ。」
「ケチ。」


先ほどから二人はどうでもいい会話ばかりを続けていた。が、そんなことをしていたって涼しくなるはずがない。
じわりじわりと汗は吹き出る一方だ。
なんとか涼を求めるため半田はあることを思い付いた。


「あ、そうだ。かき氷があった。」


半田の言葉に松野が畳から勢いよく起き上がる。


「かき氷!! 食べよう、食べよう!!」
「ちょっと待ってて。」


暫くしてから、物音が近くなってきて半田が台所から帰ってきたと思い松野は「悪いねぇ。」等と心にも思っていない事を口にしながら半田を見つけた。そして、半田の手にしているものを見て唖然とした表情になった。


「半田、なにそれ」
「かき氷機。まあ手動だけどな。小さい頃よく使ってたんだ。」
「…作るの?」
「当たり前だろ。アイス食べたいんだろ?」
「う…まあ…うん…」


直ぐに食べれるものだと思っていたため、このようにワンクッション置かれるのは非常に心外な松野だが、ここは涼しくなるため渋々頷いた。半田はそれを確認すると「よーし、早速作ろうぜ!」とやる気十分にガラガラとかき氷機に凍りを入れはじめた。


「えぇーと、それでここを回せばいいんだよな?」
「そーじゃない。」
「松野、皿持ってて。」
「もー。」


半田がハンドルを回しはじめると中の氷がガリガリと涼しい音をたてはじめた。


「あ 出てきた出てきた。」
「おー すげぇ。楽しいな、かき氷。」
「…ね、ね、僕にもやらせてよ。」
「じゅーんばん。」




そして、机に赤と青二つのかき氷が並ぶ。


「かんせーい!! じゃ、早速食べましょうか。」
「ですねー。いっただっきまーす。」


松野がしゃくとかき氷を一口口に含む。


「んー、美味しいー」
「冷てぇー。頭がキーンってする。」


猛暑に食べるかき氷は格別でほてった二人の温度をどんどん下げていった。




「はあ、ご馳走様でした。」
「さんでした。」


夏日がまだ残る8月。
二人はお互いを見合わせそしてクスリと笑いあう。


「ベロ、真っ青だよ。」
「松野も真っ赤。」


たまにはこんな暑さも気持ちがいい。


「はぁんだ。こっち向いてよ。」
「……ん。」


冷たい体に、熱いキス。
ほんのり甘い味が唇から伝わった。


「ブルーハワイも美味しいね。」
「……ばか。」


まだ夏は始まったばかりだ。



End






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