小説 | ナノ


(10年後パロ)


あちこちで桜前線通りに桜が咲き始めた頃、園の桜の花も満開に開かせていた。そんな春真っ只中。ピカピカのランドセルを背負った子どもたちや真新しい制服に身を着こんだ子どもたちがこれから始まる新生活に胸を高鳴らせながら桜が続く道をどんどんと歩いていった。
晴矢はそんなまた新しい生活が始まる園の空気を桜の香りと一緒に吸いながら「いってきます」と元気な挨拶をしながら園を後にしていく子どもたちの見送りを風介と共にしていた。


「いってきまーす!」
「おー行ってこい」
「頑張ってくるんだぞ。」


今日から小学生にあがる子たちは初めて行く学校というものに興味津々な様子で皆楽しげに園を出ていった。新しいランドセルを背負い登校する姿はついこの間まで幼稚園生だったとは思えない程様になっていた。
逆にまだブカブカの学生服を着て登校する子たちは何やら緊張した様子で晴矢はくすりと苦笑を溢した。そういえば去年はマサキもあんな感じだったよなあと懐かしくなる。しかしそんなマサキでさえついさっきにはもうしっかりと学ランを体に馴染ませながら登校をしていった。そう思うと時が流れるのは早いなあ、と感じる。今でもこんなに早く感じるのに自分より若い奴らからしたら1年なんていうのはあっという間だろう。あっという間に過ぎていって気付いたら今の自分のように大人になってしまっているのだろう。


「もう、春だなあ。」


沁々、今の言葉は自分でもオッサン臭いと思う。隣で同じように子どもたちの見送りをしている風介もそう感じ取ったらしく険しい表情をしたまま「オッサンみたいだぞ晴矢。」等と言ってきた。


「うっせえ。」
「…まあ、でも…確かにもう春だな。あっという間に、春だ。」


さあ、と桜の花びらたちが風に揺られひらひらと辺りを薄いピンクに染めていく。


「桜ももうすぐ散ってしまうな。」


風介がぽつりと呟いた。晴矢も桜を見上げながらああ、と短く返した。


「今年も、こうして晴矢と桜をみることができて良かった。」


桜が散っていくのは話で聞くよりかも遥かに早い。


「なあ、晴矢?」


風介は散っていく桜だけを見ながらぽつり、ぽつりと言葉を紡いでいく。


「なんだ。」
「来年も、こうして君と桜が見れるだろうか。」


遠くの方から子どもたちの声が聞こえてくる。元気な、明るい声だ。あの声たちを聞いているとこれからどんな風に育っていってくれるのかとても楽しみになる。


「…見れんじゃねーの?」


俺たちは桜のように次へ次へと進んではいけない。
子どもたちのように早くは育つことはできない。
自分たちなりの早さで1年1年を過ごすしか時間の中で生きていくことはできない。


「俺たちゃ、去年と差ほど変わってねぇんだからよ。」


桜のように早くは散ることはないのだから。


「…はは、そうだな。」


新しい春がまた今年もやってくる。




End

薄桃が散り逝きなるままに




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