小説 | ナノ


(10年後パロ)


「真一!雨降ってきたよ!」
「え、嘘だろ?さっきまであんなに晴れてたのに!」
「だって嘘だもん。」


3月が昨日で終わり、いよいよ春も本格的な4月が始まろうとしていた今日、俺の目の前で空介はニヤニヤと何やら不敵な笑みを浮かべていた。


「今日は何月何日でしょうか!」
「…4月1日 エイプリルフールだろ…」


俺の目の前で楽しそうにピースサインなんか掲げている空介を俺は怨めしそうに睨みあげた。毎年、毎年俺はこの日がエイプリルフールだと知っているのにも関わらずこいつに騙される。そしてこうしてこいつのこの嬉しそうな顔を見ることになるのだ。この日に限ってはこいつの嬉しそうな顔は大変頭にくる。俺は溜め息を吐きこの間買ったばかりのソファに乱暴に腰かけた。


「あ、そのソファ破けてるよー」
「はぁ?マジか、…嘘?」
「うん。嘘。」


見上げると、満面の笑み。ヒクッと俺の右口角があがるのが自分でもわかる。
俺も嘘をついてやる。


「なあ、空!」
「なにー?」


たまにはお返しぐらいしたって神様は怒らないだろう。
俺はズンズンと空介に近づいていき、キョトンとした表情でこっちをみている空介の両手を力強く握りしめた。


「明日、俺たちの結婚式をあげよう。」


俺はぎゅうと握っている手に力を込めながら空介を見つめた。空介はそんな俺をさっきのキョトンとした顔で見ていたがみるみる内に嘘をついた時と同じような満面の笑みになっていった。


「ほんと?」


ぎゅ、と今度は空介から強く手を握られる。


「ううん。うそ…」
「ううん。ほんとだよ。」


いつの間にかに俺よりも背が高くなった空介は上から俺を見下ろしてくる。目を逸らそうとすると顎を捕まれ少々上向きにされた。空介…?


「だって、真一。」


ニヤリと笑う空介の顔は今までのエイプリルフールの中でも一番の満面の笑み。


「エイプリルフールに吐いた嘘は全部叶うんだよ。」


ふわりとほどかれた腕が俺の体に絡み付き、手を握られた時と同じように強く抱き締められた。


「だから、僕らも結婚できるんだーっ!」
「は?え、何言っ、て…」


エイプリルフールに吐いた嘘は叶うんだよ
だなんて、何こいつはこっぱすがしいことを言ってるんだ。俺はまた溜め息を吐きながら嬉しそうに俺を抱き締める空介を見上げた。


「真一ー」


その嬉しそうな顔。
そんな顔を見れるのならたまにはエイプリルフールもいいかもしれない。

いつか叶う夢を信じて。




End


嘘つきの願いごと




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