小説 | ナノ


がしゃん、と皿が何枚か割れたような音。その音の後にマルコの小さな悲鳴。ジャンルカは音のした先へと足を走らせ、そしてその有様に大きく溜息を零した。まずジャンルカの目に飛び込んできたのは無惨な姿で床に散らばっている皿の白い破片。そしてその真ん中で苦笑いを浮かべている同じサッカーのチームメイト、で恋人のマルコだ。


「また君か。マルコ!」
「あ、ジャン…。あ、はは、…ごめん。」
「ごめんで済むならこれ以上僕の仕事を増やさないでくれないか。」


マルコが起こした失敗はこれで3回目だ。先程も買い物に行かせたら財布を忘れただのゴンドラの掃除をさせたらゴンドラを破壊するだのつくづくマルコという男は無事に事を納める、ということが出来ないやつだ。今回もお詫びにパスタをご馳走するよ、といいキッチンに向かった所、こういう結果になってしまった。パスタならマルコの得意分野だから大丈夫だろう、と思ってしまった自分が憎い。
ジャンルカが散らばった破片を拾いあげていると横からマルコも直ぐに僕も手伝うといいながら破片に手を伸ばし始めた。


「こら、マルコ。君はもう何もしなくていいから!」
「や、やだっ!僕も手伝う!」
「怪我するだろう!」
「しないよっ!…痛っ…」
「ほら…。」


破片を手にした途端、マルコの白い指からぱたぱたと血が零れた。ほらまたこいつはどんどんと仕事を増やしていく。ジャンルカははあ、と再度溜息を吐いた。


「手、貸して。」
「…え?」
「血、出てるだろう。」
「…ごめん…」


マルコは申し訳なさそうに手をジャンルカに差し出した。マルコの指からは引っ切り無しに血が溢れ出している。傷は小さいが深く切ったらしい。ジャンルカはマルコの手を掴むとパクりと血で汚れた指先を口に含んだ。


「え、え?ジャン?な、何してん、の?」
「何…って。手当」


マルコは突然の出来事に何が起きているか分からない様子で自分の指を舐めているジャンルカを凝視している。ジャンルカはジャンルカで手慣れた様子で上手に指に溜まった血を舐めとっていき、最後にちゅ、と小さくキスを落とした。


「今は忙しいからこれで我慢しろ。あとは自分で手当して。それくらいは出来るだろう?」
「う、うんうんうんうん」


マルコはキスされた指先を見ながら、こんなんでちゃんと手当できるかなと自分で自分に不安を感じる。
しかしジャンルカはそんなこと気にしないかのようにまた破片を拾い始めた。


「全く… 君はとんだトラブルメーカーだな。」
「いや!ジャンには言われたくないよ!ばかっ!」


こんなに僕をドキドキされるだなんて君だってかなりのトラブルメーカーだよ!




End

トラブルメーカー




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