最後の花火 君と迎えた夏。 俺ははあの夏を決して忘れはしない。 俺の心の中に花火みたいに切なく、ただ綺麗に残った君を、 俺は一生をかけて愛すと誓った。 ミーンミンミンミンミン.... 蝉が大きな声で自己アピールを始めた8月中頃。雷門町ではちょっとした一大イベントが行われようとしていた。 その名も『雷門花火大会』だ。 「はぁっ、はぁっ。」 そんな人賑わう街中、半田真一もそのイベントを楽しむべく街中を走っていた。 やばい、やばい。 待ち合わせに遅刻する…!! 今日は雷門サッカー部もちょっと早めに部活を切り上げ、皆で中学最後の花火大会を楽しもうと意気込んでいる。 「はぁ…はぁ……、…」 半田は待ち合わせ場所のスポーツ用品店が見えはじめた所で走っている足を止めた。 そして、向こうで自分に気がついて手を振ってくる円堂、風丸、鬼道等といった約2年、円堂とは約3年間同じ部活として一緒にプレイしてきたメンバー達をみてホッと頬を緩めた、のと同時に時が進むという事に多少の恐ろしさを感じた。 雷門サッカー部も大半が3年に進級していた。 向こうで手を振る彼らはすっかり3年らしい顔をしている。もう廃部寸前のサッカー部員ではないのだ。日本一になり、世界一になった彼らはそんな称号に相応しい表情になっていた。 「おう! 待たせた。」 「半田!!」 「大丈夫だ。皆今来たとこだ。」 「ああ。…よし、じゃあ早速行くか。円堂。」 「おう!! よーし、じゃあ中学最後の夏祭り、思う存分楽しもうぜ!!!」 「「「おー!!!」」」 皆でお決まりのファイティングポーズをして、雷門サッカー部最後の夏祭りが始まった。 「はぁーんだ。」 と、その時。 後ろから聞き慣れた声が半田の名を呼んだ。 「松野。」 松野空介。 松野も同じサッカー部員。松野とはFFからの付き合いだ。重傷を負い、入院をする事になった時もずっと一緒にいてまた雷門サッカー部でプレイすると同じ目標を掲げていた。だからこそなのかもしれないが、半田と松野の間には回りとはもっと強い二人だけの絆があった。 「やほー。走って来たんだ? 汗、だっらだらだよ?」 「うん。…マジか。まあ、大丈夫だろ。外だし。」 「半田くん、くっさぁい。」 「うっせぇ。」 半田が軽く笑うと松野はクスクスと小さく笑った。 しかし、今の半田にとってこんな時間も大切に思える。半田は大声で、「よーし!! 今日はとことん臭くなるぞー!!!」と叫んだ。松野もそんな半田をからかいながら大声で叫ぶ。 もうすぐ、このメンバーとお別れ。 そんな3年だからこそのセンチメンタルな気持ちが彼らを熱くさせていた。 それからは、全員で様々な屋台を回り、笑いあった。 円堂が射的がとてつもなく下手くそだったり、風丸が焼きそばを落としてしまったり、他には帝国のメンバーも祭に来ていて鬼道が嬉しそうに昔の仲間達を話していたりと彼らのモチベーションは最高潮まで上がってきていた。 半田も松野と赤と黄色のかき氷をそれぞれ持ちながら笑っていた。 そんな中、夏祭りの目玉とも言えるイベントが始まる合図がアナウンスされた。 『もうすぐ、夏祭り最大イベント、花火大会が始まります。』 「お、やっと始まったな!」 「よっし、もっと近くまで行こうぜ!!」 ぞろぞろと花火大会会場に足を運び始めた中、半田も胸を躍らせる。 ―――――さあ、最後の夏祭りが始まる。 continue |