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変わらぬ愛を送り続けよう

恋人達にとっては待ってましたと言わんばかりのイベントが今年もやってきた。2月14日、町中がピンクピンクに染まる日。バレンタインデーだ。そんな甘い空気が漂う中半田は一人苦々しい表情を顔に貼付けながら可愛らしい包装をされたチョコを手に取りしげしげと見つめていた。箱の中のチョコレートには『I Love You』等という歯が浮くような言葉が施されており、勿論バレンタイン専用チョコレートだ。半田はそのチョコ向かって一回大きくしかめつらを向けゆっくり商品棚に戻し、自然に口からこぼれ落ちる溜息さえもそのままにしてバレンタインコーナーから離れることにした。そんな動作に自分ながらも情けなく感じる。全く大の大人がこんなところで何をしているんだろうか。チョコを買うか買うまいか等という青臭い子供のようなことを悩んでいるだなんて。


「もう、10年も経っているのに、なぁ。」


半田がなぜこんな場所にいるだけて胃もたれをしそうな場所にいるかと言うとそれは今同居中の同居人兼恋人の松野空介のためにチョコを購入しようと思ったからだ。半田はもう一度バレンタインコーナーの中央にでかでかと吊されている看板を睨みつけながら溜息を漏らした。
今年もこうしてチョコを買うか買うまいかで悩むだなんて。
ほとほと自分には素直さが全く足りないと自覚される。松野とは中学の時からの付き合いだからもう10年近く一緒にいるということになる。それなのにも関わらずこうして迷ってしまうのはなぜなのか自分が1番知りたい。


「…、結局、かよー…」


しかしこれは性というのか性分というのか。半田は目の前に広がるバレンタインコーナーの一角をみて苦笑を一つ零した。そしてそのままハート型のチョコが並ぶ棚まで足を再度運ばせた。


「ばっかじゃねーの?」


皮肉をたっぷり含めて言葉を投げつける。


「…真一くんだってそうじゃないですか。」


棚の中で1番でかいハートを手にとりながらこちらを訝しげに見てくる松野に向かって。


「うるさい。俺はたまたま通りかかっただけだっつーの。」
「嘘だ。だって僕見てたもん。さっきから真一がここでチョコ選んでたの。」
「な…!!!」


松野はふん、と鼻を軽く一回鳴らしながら言った。半田は見られていたことに恥ずかしさを覚え顔を真っ赤に染めた。まるで中学生みたいだ。

いや、


「真一も僕にチョコくれるつもりだったんでしょー?」


まだ、中学生みたいなんだきっと。


「んな訳ねーよ。自分用だ、じぶんよう!」


あれから10年の歳月が流れようと俺らの気持ちはあのままの姿で変わることはない。


「自分に『I Love You』とかやばいよ。」
「ばっ… ちがっ、違う!!」


それはこのあとも、この先も。


「違うんなら僕用でしょ?」
「〜〜っつ!!」


変わらぬ愛を君に捧げ続けよう。


「はっぴー ばれんたいん!チョコちょーだいっ」
「断る!!」





変われぬ愛を君に捧げよう。




Happy Saint Valentine's Day.







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