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さよなら、三角



僕らは他にもまだこの辺りを徘徊している死に神達をを撃退した後、また僕の部屋に戻ってきていた。

「うーん!今日もよく働いたぜえ!」

黄汰くんは部屋に戻るや否や早速僕のベッドに寝そべりはじめた。

「お疲れ様、皆。美月ちゃんも悠馬もお疲れ様。ありがとう。」

そのあとに続くように陽さんが部屋へ戻ってきた。そして黄汰くんの方に一瞥やると少し悲しそうな表情を浮かべた。

「ほら、黄汰。寝ちゃダメだよ?もう僕らも行くんだから。」
「え。もうですか?」
「当たり前じゃない。もう5時よー?」
「もうすぐ日の入りだ。」

僕は陽さん達の会話を聞きながら少し嫌な予感がした。その嫌な予感は悠馬くんも感じたようで隣にいる涼さんに何か聞いている。

「…私たちは他の世界の者です。日の入りと同時に自分達の世界へ帰らないと体もろとも消えてしまうんです。」
「消える…?」
「はい。まあ、もともと私たちが君達の世界へ来れたことが奇跡。ハロウィンだから出来た事なんです。」

涼さんはそう言うとニッコリと笑った。

「じゃあ、もうそろそろ皆は帰っちゃうの?」

僕がそう聞くと陽さんは伏せ目がちに「奇跡はそう長くは続かないものさ。」と答えた。どうしてだろうか。自然に目頭の辺りがじわりと熱く感じるよ。

「さ、皆。もう時間だ。」

陽さんはそう短く言うと、僕と悠馬くん以外はこくりと一つ頷いた。陽さんはそれを確認した後右手でノブを開けるような仕種をした。すると、フワッという弱い風と共に大きな扉が現れた。

「うわっ。なにこれ!」
「僕らを帰り道へ導いてくれるものさ。」
「…もう、帰るのか。」
「ああ。…さ、皆急いで。これが開いていられるのはあと5分だ。」

陽さんに促されように最初に藍さんが扉の中へ足を踏み入れ、それに続くように裕也さんも扉をくぐっていった。

「…楽しかった…また、会お…」
「あっ、藍さん!美月くん、悠馬!今日は楽しかったよ。二人にハッピーハロウィン!」

そして、シュン…という音と共に二人の体は扉の中へ消えていった。

「悠馬さん。」
「…涼…」
「対死に神の時はありがとう。君のお陰で大分助かりました。…君は随分純真な心を持っているね。私は、君と友達になれて良かった。」
「…純真…?」
「えぇ。楽しかったです。…また、会える日まで。」
「涼!また、絶対会おうな!友達だからなっ…!」

涼さんはゆっくりと一つ頷き、扉の中へ消えていった。

「みーつきっ。」
「!琥珀ちゃん。君ももう帰っちゃうの?僕、もう少しお話したかったよ。」
「あたしも。でも、大丈夫。また会えるからさ。…なんだか、そんな気がする。」

琥珀ちゃんはまた会った時と同じような笑顔を浮かべた。その笑顔を見ていると保障はなんか何処にもないけど僕もまた会えるような気がした。

「うん。僕もそう思う。」
「でしょ?そん時いっぱい話そう!あたし、楽しみにしてるっ。」

そして琥珀ちゃんも扉の中へ消えていった。残るは黄汰くんと陽さん。

「…なげぇよ、お前ら。あと5分っつってんだろ。」
「黄汰くん。」
「…ま、別に、俺も、楽しくなかったー…訳じゃねぇからさ、いーんだけど。」
「素直じゃないな、お前も。」
「うっせ、黙っとけ。おう!チビ美月!」

僕は黄汰くんに呼ばれ、彼のもとに駆け寄ってみるとポンッと頭に手をおかれた。

「痛っ。な、なにす…」
「今度会う時まではもう少しでかくなってろよ。チ−−−−ビ!!!!」
「なあっ!」

君だって僕と同じくらいじゃないか!と反論する間もなく黄汰くんはパタパタと可愛らしい耳と尻尾を振りながら帰っていった。

「よっし、皆帰ったか。じゃあ…僕もそろそろ行かなくきゃな。」

陽さんはノブを掴んだままで僕らに笑いかけた。

「陽さん。」
「君達のハロウィン、楽しかった。」
「…ああ。俺達も。」
「それならよかった。…扉が開いたのが美月ちゃんの部屋で良かったよ。」
「今なら僕もそう思えるかも。」
「怖い思いをさせてごめん。」
「大丈夫。」

それから陽さんは優しい笑顔を浮かべた。ぽぅっと鬼灯が燈った気がした。
ガチャリとノブを離す音が聞こえた。

「二人とも!ありがとう!!』

バタンッと扉の閉まる大きな音が聞こえた。

外にはまばゆいばかりの光の太陽が爛々と自己主張を始めていた。もう月は眠ってしまった。また新たな一日が始まるんだ。

でも、新しい一日が始まっても君達と居た時間は眠らないよ。
だから、僕はまた君達に会える日まで何日も何日も新しい一日を迎え入れる。

ハッピーハロウィン




End & HappyHelloween




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