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かごはからっぽ



「…ぜ?」
陽さんの声と重なるように窓ガラスが割れた。
「いってぇえ!」
「うわぁあ!藍さん大丈夫ですか!」
「…大丈夫。」
「ちょっと裕也さん!何やってるんですか!」
窓ガラスを割って人の部屋に入ってくるというダイナミックな入り方をしてきたのは悠馬くんと見たことない3人組だった。
「は、悠馬くん?!どうして?!」
「裕也、藍、涼。お疲れ。」
「ビビらせんなよ、おまえら…」
僕は陽さんと黄汰くんの侵入それから夜空から降ってきた天使悠馬くんとまたまた怪しい3人組の登場でもう気絶寸前。それなのに、
「もー陽さん?またそんなダッサイ服着てー。」
「お、琥珀も来たか。上がれ、上がれ。」
またまた知らない女の子が割れた窓ガラスからひょいっと侵入してくる訳で。
「わっ、チビ美月が倒れた。」

誰か状況説明をよろしくお願いします…

「ってな訳で、俺はこいつらに寝てるところを無理矢理起こされて『陽さんの元へ!』なんて意味わかんないこと言われてもここに連れて来られた。」
悠馬くんは頭を掻きながらそう言った。うああ寝起きの悠馬くんもカッコイイなあ。
「悠馬さん、本当に申し訳ございませんでした…。でも今日だけはこうしないといけない訳でして…」
「そうなんだよ。理解しておくれ悠馬よ。今日はハロウィンだ。」
「…悪霊払い」
「ああああ藍さん可愛い!もう一回言って!私のためにもう一回…」
「裕也さんうるさいですから。」
僕はそんなやり取りを頭に氷嚢を乗せながら見ていた。隣の女の子もやれやれという感じだ。
「ごめんなー、うるさくて。あいつらいつもあんな感じでさあ。あ、あたし琥珀。君は?」
琥珀と名乗る女の子ははは、笑っていた。あ、なんだかこの子はまともっぽそう。
「僕は、美月。」
「美月!よろしくなっ!」
琥珀ちゃんは可愛らしい笑顔で手を差し出してきた。握手のつもりだろう。僕もきゅっと琥珀ちゃんの手を握りかえした。


「よっし、じゃあみんな揃ったな?!」
それから幾分かして陽さんがぱちんと両手と両手で音を鳴らした。それを合図に僕らは陽さんの方を向く。なぜか僕と悠馬くん以外はニヤリと笑っていた。
「揃った…って、これから何かすんのか?」
「いい質問だね、悠馬。いいぜ、教えてやろう。」
悠馬くんの疑問に陽さんは口元に自信をたっぷりと含ませながら答えた。きっと凄いことを仕出かすつもりなんだろう、この人たちは。陽さんはチッチッチッと外国人の様に指を左右に小刻みに振っている。
「僕らはこれからある仕事をするんだ。」
「…仕事?」
僕は首を横に傾ける。それに琥珀ちゃんか隣からひょいっと首だけ出した。
「あたしらの仕事は悪霊払いなんだ!どう、凄いでしょ?」
「悪霊払い…」
ああ、さっき陽さんや藍さんが言ってた事か。
「悪霊払いこそが僕らがこの世界に来た目的だからね。」
「あんたらも付き合えよな!お菓子、くれなかったんだから。」
「…え、付き合う…?」
「悪霊払いに?」
黄汰くんのびっくり発言に僕と悠馬くんはお互いに目を合わせた。
え、だって僕ら人間だよ?
「いやいやいや。陽さん?僕ら人間だよ?悪霊払いなんて〜…」
「いいぜ。面白そう、やる。」
まさか、悠馬くん。そんな面白そうだからって、そんな、ねぇ。ちょっと…。まあそこが悠馬くんのいいところでイケメンポイントだからいいんだけどさ。
「じゃあ決まりだな!チビ美月も勿論やるだろ?」
「あたしらと一緒に楽しもうよ!悪霊払い!」
「美月さん?大好きな悠馬さんもやるんですよ?」
「きっと貴方も楽しめるはず。なぜならそれは藍さんがいるから…!」
「…わくわく」
「やろうぜ、田崎!」

「美月ちゃん?さあ、どうする?」

陽さんがズイッと顔を近づけて僕にそう問いかける。
「う、うぅ…。」
そんなにみんなで言われたら、そんなの…

「わかったよ!やればいいんでしょ!」

「…早速決行だ!!」
陽さんの無駄に大きくて明るい声がハロウィンの夜空に響いた。


からっぽのかごの代償に。







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