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今夜は10月31日


名刺を差し出されてうん10分後。
僕はやっと今、自分が置かれている状況を理解した。簡単に陽さんの言葉を使って説明してみるとこういう事だそうだ。
「だからー、今日はハロウィンだろ? 悪霊払いの日だろ? =僕らの出番ってことだ。それでどっから悪霊払いすっかなーとか思ってたらたまたま君ん家に扉が開いちゃったってこと。」
だそうだ。
イマイチ悪霊払いとか扉とかよくわからないけど質問したら隣にいる猫耳―本当は狐耳だそうだ―の黄汰くんにまた怒られるからしないでおく。
「ちなみに僕らは妖怪なんだ。僕は名刺にも書いてあるけど鬼。っていってもハーフなんだけどな。で、こっちにいるのが妖孤の黄汰。」
「鬼…の子…妖孤…」
なんだかあんまり信じづらい話だなあ…。
「なんだかその顔はあんまり信じてない顔だな。じゃあ特別にあるもんを見せてやるよ。」
陽さんは僕の気持ちを察したのか、ニィと口の端を持ち上げて両手を広げた。
「え! 陽さんこんなチビにあれ見せちゃうんですか?!」
黄汰くんはこれから何が起きるのか知っているのか。狐耳をピーンっと立てながらいかぶしげな顔をして陽さんに突っかかった。そんな黄汰くんに陽さんはサラッとしながら返事をする。
「だって信じてないから。」
「おい!チビ! 信じろよ、お前!ばか!ばかばか!」
「は?何?え?」
黄汰くんに散々に言われながら僕は目の前で謎のポーズを取っている陽さんを見つめた。
「ていやっ!」
可愛いかけごえ。
ポワッ
「え、…」
陽さんの手の平から淡いオレンジ色の炎が輝いている。
「どう?凄いだろ。」
「これを初対面で見れるとか…羨ましい…」
「これ、何。手品?」
僕の一言に黄汰くんは目を剥いて僕に向かって叫んだ。
「ばかか、お前!」
「はは、これは鬼灯っていって特殊な灯なんだ。手品じゃないぜ。種も仕掛もねぇからな。」
「おに、び…。」
鬼灯と呼ばれるその灯はなんだか見ているとポカポカしてくる。不思議な感じだ。こういうのって心地良いっていうんだっけ。解らないけど嫌じゃない。僕は自然と口元に笑顔を作っていた。
「どう?僕らのこと信じる気にはなった?」
陽さんは灯を燈しながらそう聞いてきた。僕はその返事の代わりに首を縦に一回振った。すると黄汰くんの「おせぇよ。」という声が聞こえた。
「よっし、じゃあ美月ちゃん。」
「なに…?」
陽さんの声と共に鬼灯が消えた。現実に戻されたような気分になる。
「今日は何の日かわかってるよな?」
「え、今日? えぇと…ハロ、ウィン?」
僕がそう答えると陽さんは満足したようにうんうんと首を上下に何回も振った。そして自信たっぷりに。
「なんか上手いもんくれ!」
「おら、チビ美月!ださないと悪戯するぜ?」
黄汰くんもニヤリと笑いながら悪戯だなんて物騒なことを言ってくる。が、僕は一人キョトンとした面持ちで口を開いた。
「上手いもんなんてないよ。」
ハロウィンだからってここは日本。お菓子なんて用意してる家の方が珍しいだろう。僕はごめんねぇと言おうと口を開いた瞬間。陽さんにガッと肩を捕まれた。
「うわっ、よ、陽さん?!」
「美月…ちゃん、お菓子がない…なんて…」
僕は目を疑った。
「…! よ、陽さん!」
黄汰くんも何が起きているのか解らないという風に目を見開いている。
「悪戯…する……」

ガチャーーーン!!!!!!!!!

僕の部屋の窓ガラスが大きな叫び声を上げた。







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