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それじゃ、クッキー



「悠馬くんて意外といっぱいお菓子持っているんだねえ。」
むしゃむしゃと手渡されたチョコチップ入りクッキーを頬張る田崎は尊敬するような言い方でそう言った。
「お前は大量にお菓子食うのな。」
俺は田崎の回りに散らかっているクッキーが入っていた空のビニール袋をみながら溜息をつく。一体このビニール袋は何枚あるのだろう。ざっと見ると10枚は軽く越しているように見える。
「ハロウィンだから。」
「理由になってないから。」
田崎のへんてこりんな返答に苦笑しつつ俺も机の上に広がっているクッキーに手を伸ばし口に放り投げた。
「…ん、美味い。」
市販で売っていたクッキーだが中々いける。只単に俺の舌が庶民的なだけかも知れないが。生地の間々に挟まっている(という言い方はおかしいかもしれないが。)チョコチップのほんのりとした甘さがちょうどいい。
「んふふ。美味しいねえ、このクッキー。」
田崎は俺の『美味い』という言葉に反応したのか整った顔をくしゃっとした得意の笑顔をする。
「スーパーのだけど。」
ぴりっ、と俺はまた新しいビニールを開ける。
「でも美味しいのは確かでしょ?」
田崎もまた新しいクッキーに手を伸ばす。
「………」
美味しいのは、確か。
まあ、それは、うん、確かだ。庶民的でも高貴的でもこのクッキーは美味しい。その証拠に俺の回りも次第に田崎の回りと同じようにビニールが散らばっている。
「でもね、悠馬くん。」
ぱくりと田崎がクッキーを一口かじった。田崎の手元には新たなクッキーが。チョコチップが美味しいそうに挟まっている。
「美味しく感じるのはもうひとつ理由があると思うんだ。」
「…もう一つの理由?」
俺もビニールを開ける。
「うん。知りたい?」
悪戯小僧のような表情でそう言う田崎はいつの間にかに俺の目の前で立ち上がっていた。俺はそんな田崎を不思議に思い見つめ、無意識に首を縦に振っていた。
「それはねぇ。」
田崎の持っているクッキーが俺のクッキーに重なる。

「悠馬くんと一緒だから。かな。」

田崎はそういいまたんふふ。と笑った。
「俺と?」
それは、なんだろうか。二人で食べると尚美味しいということだろうか。俺は少し考えてそれからああ、そうだな。と笑った。
確かにただの市販のクッキーだけれど誰かと食べれば美味しく感じるかもしれない。

だって、そこには庶民的も高貴的も関係ないのだから。
一緒にいて楽しいと思える相手はどんな位の奴であろうと一人はいるものだろう。
言い方は古いだろうが友情はプライスレスだ。

「俺もお前と一緒だから美味しく感じるのかもしれない。」
田崎の顔が真っ赤に染まっていた。








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