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まずはキャンディー



「Trick or Treart!!」
目の前で魔女の恰好をした田崎は満面の笑みで手を差し出してきた。
「…やる気満々だなあ…、」
俺はそんな田崎を見て困り笑いを零す。
…まあ、どうせ暇なんだ。折角田崎が遊びにきたわけだからハロウィンというやらを楽しむとするか。
そして俺は勉強机の引き出しを開いた。中には色とりどりの包み紙に包まれた小さなキャンディー。その中の一つをつまみとり、差し出された手の平に置いた。
「いたずらは勘弁してくださいな。ほら、飴ちゃん。」
「わーい! 飴ちゃんだあ! ありがとう、悠馬くん!!」
田崎は飴ちゃんを受け取ると嬉しそうに包み紙を開け、ぽーいと口の中にほうり込んだ。そして嬉しそうに顔を綻ばせる。
「苺味だね。美味しい!」
田崎はそう言うと綺麗な顔にふにゃりと間抜けな笑顔を貼付けた。その笑顔に一瞬胸がドキリと鳴る。なんていうか…田崎は男の俺が言うのはあれだが可愛い方だと、いやかなり可愛い方だと思う。
「……」
なぜだろうか。
田崎を見ているとなんだか胸がほわほわしたような幸せな気持ちになれる。
まるで、苺風味に包まれたような感覚だ。口の中いっぱいに広がるほんわかとした甘さと少量の酸味。二つがちょうどいい感じに混ざり合う時が1番美味しい。

ああ、そうか。

「…田崎いー。」
「ん? はに? 悠馬くん。」
田崎は口に飴ちゃんが入った状態で話しているためうまく舌が回らないみたいだ。俺はまた困り笑いを浮かべながら、引き出しの中の飴ちゃんの隣に置いてあった次のお菓子を手に取った。

ああ、そうか。

「クッキーはいかが?」

田崎は苺キャンディーみたいだ。

「!! クッキー!!」

苺キャンディーは俺の1番好きな味。
甘さの中にほんのりと酸味が混じっていて。大人はそんなの子供の味だって馬鹿にするけどまだまだ俺は子供でいい。

「いる!!」

ハロウィンを楽しめる子供がいい。







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