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今日は10月31日



空は天高い最高の秋晴れ。
温度も過ごしやすい23℃
俺、前橋悠馬はそんな穏やかな午後を一人自室で過ごしていた。
まあしかし、穏やかな午後と言っても自分は一人お茶会を嗜むような性格も、魔法少女やメイド、スク水少女をみて妄想を繰り広げるような趣味も持っていないただの男子高校生な訳だから暇で暇で仕方ないのだが。
だから、音楽をヘッドフォン等で聞いていたのだ。

だから、気づかなかったのだ。


「………」


まさかの客人に。


「…ふ、ふふーん………うわっ。」


突然、いい感じで聞いていたヘッドフォンをパッと取り上げられた。驚いて宙に浮かんだヘッドフォンを見上げるとそこには見慣れない魔女帽子を被った見慣れた顔が。


「田崎。」
「もー、悠馬くん?? 僕、玄関で何回も呼んだのに。」
「え、あ、マジ?? ゴメン、ゴメン。」
「ゴメンゴメンじゃないよっ。」


田崎はふわふわの金髪と真っ赤な赤いヘアピンをユラユラと揺らしながらぽこぽこと俺の頭を叩いてきた。


「まあ、まあ。痛いから。田崎くん。…っていうか、その変な帽子何?」


叩かれながらさっきから気になっていた田崎の頭の上にちょこんと乗っかっている帽子を指差した。そしてよく田崎を見てみると魔女のような出で立ちをしている。


「今日、なんかあんの?」
「へ? あっ、気づいてくれたっ??!」


気づくも何もそんなド派手な格好してたら流石に気づくよ…。等と思いながら上下に一つ顔を動かした。


「今日は10月31日だよっ。」
「31…。なんだ?」


31日と言われても、俺の家ではただの10月最終日としか過ごしてきていない。そんな何でもない日に何かお祝い事でもあったっけ。
俺がうーん、と首を傾げていると痺れを切らしたのか田崎は魔女マントをばさりと広げ胸ポケットからまるい棒に刺さっている飴、通称ペロペロキャンディーを見せてきた。


「トリック おあ トリート!! ハロウィン、だよ。ハ ロ ウィ ン !!」
「はろうぃん…? ああ、ハロウィンね。あのかぼちゃの。」
「せいかーい!」


ハロウィンなんていう日本ではあまり盛んではないイベントのためにわざわざこいつは俺ん家まで来たというのか…。
なんていう暇人…。まぁ俺も人のことは言えない立場だが。


「で、何? わざわざ俺ん家来たってことは。暇なの?」
「う…暇…って訳じゃないけど…。まあ…暇でもあるのかもだけど……」


やはり図星だったらしい。田崎は支離滅裂な言葉を並べながら大きな猫をあちこちに泳がせている。


「まっ、まぁとりあえずっ。悠馬くん!!」


田崎はほっぺを真っ赤にしながら俺に向かって手を伸ばしてきた。


「Trick or Treat!!」


今日は10月の最終日にして、最大のイベント。

10月31日、ハロウィンだ。








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