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あんたの気持ちなんかとっくに知ってる



「まつ…のお…」


ぼんやりと視界が歪みはじめたと思ったら、いつの間にかに頬に暖かいものが流れ落ちていた。それは松野に「なーに、泣いてんの?」と言われ漸く涙だと気づいた。


「泣き虫半田。」
「うっさい…」


涙の流れた理由。
そんなこと、どうだっていいんだ。

自分の想いをちゃんと思い出したなら。

大好きな君に伝えたいこと。
そんなものはあんな紙切れ一枚じゃ伝わらない。

たくさん、たくさん、伝えたいことがあるから。
君に届けたいことがあるから。

俺は目尻に溜まった涙を腕で拭った。
視界がはっきりと見える。
目の前で何もかもわかっているような顔をしている松野もちゃんと見える。
俺より一枚も二枚も上手の松野が。

ちゃんと見える。

ちゃんといる。


「松野…ごめんね」


ずっと不安だった。

松野が俺をちゃんと好きでいてくれるか。
嫌いにならないでいてくれるか。


「好き。松野」


でも、気付いたんだ。

いつの間にかに、俺はこんなにも


松野に惹かれていることを。


最初は苦手だった君の一方的な想いも今では心地好く聞こえる。

大好きになった。

大切なかけがいのないものになった。

手放したくなくなった。


「好き、大好き。」


だからこそ、不安になったんだ。


「好き」


「大好き」


けれど、君なら大丈夫。


涙で濡れた俺の頬がゆるりと緩んだ。


伝えられるよ、君に。


「ありがとう。半田。」


もう俺は見つけていたから、今度はきみに。
溢れんばかりのこの想い。


「僕の想い、受け取ってくれて。」
「…気付いてなかったんだね、俺は。」


夕日が優しく俺らを照らす。


松野の気持ちなんかとっくに知ってたこと。」


大好き。
だからこそ、伝えにくい。


「僕は半田が気づく前に半田の気持ち、知ってたけどねー。」
「…なっ…!!!……ん…??!」


唇に優しい温度が触れた。
甘い甘い、キス。


「大好きだよ、半田。」


けれど、俺よりも何枚も上手な君にはもう伝わっているみたいだ。




05.あんたの気持ちなんかとっくに知ってる。
End


お題『松半で一枚上手』
End







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