『2人』で『1つ』 (死ネタ注意) 驚いた。 今はこの一言に尽きる。 「晴矢。晴矢、何をしているんだ。」 目が覚めた場所は見慣れた場所、小さい頃からずっと生活してきたお日様園の屋上だ。 この屋上は私と幼なじみの晴矢しか知らない秘密の場所。 ここで私たちは色んな事を話した。好きな子のこと、サッカーのこと、お互いのこと。 そんな思い出がたくさん詰まった場所。 なのに。 「…何を考えているんだ…? 晴矢。」 今、晴矢はそこから身投げをしようとしていた。 気持ち悪い程の青い空にサラサラと真っ赤な赤い髪をなびかせながら。 黄色の瞳は何処を見ているのか、もしくは何処も見ていないのか。そんないつものよううざったい瞳はもう亡く、ただ虚ろな瞳をしている。 私の指先はそんな別人の様な晴矢をみてふるふると震えていた。口からは、ポロポロと言葉が落ちるばかり。 一体、どうしてしまったんだ…? 「自殺…なんてやめろ。」 「……」 気休めしか出てこない自分が酷く恨めしく思える。そのせいなのか、晴矢は私を無視し続けていた。 「晴矢…やめろ…許さないからな、そんなこと……」 何もかも諦めた晴矢の背中に一歩近づいた。小麦色に日焼けした腕が目に入る。私はその腕をこちら側に引っ張ろうと手を伸ばした瞬間。 晴矢が口を開いた。 「風介。」 名前を突然呼ばれ一瞬、心臓が大きく跳びはねた。 「な、なんだ。はる…」 「俺、お前が好きだった。」 私を遮る様に晴矢はそう言った。 好きだった。 「…は? なに…」 あまりに突然の告白に思考回路がショートした。目の前がぐるぐる回っている。 「恋愛…して……す……………き……た。」 耳もノイズが響き始める。 上手く晴矢の言葉が聞き取れない。 「な…に……まえ……は、」 晴矢がギュッと拳を握りしめた。 「も…………ない………いない……んだ。」 ノイズがかかった雑音の中。 いないんだ。 何が、誰が、いないんだ。 「風介、お前は、もう、いないんだ。」 この瞬間、私はこの世の総てを疑った。 「…私が…もう…いない……?」 脳内にある場面がフラッシュバックした。 道を歩いていたら、突然車が自分に突っ込んできた。 鈍い痛みが体に広がる。 次にはもう意識はなかった。 「…あ…ああ……ああ………」 晴矢に触れようと手を伸ばすとそれはあまりにも切なくするりと晴矢を通り抜けた。 「私は…もう、死んだのか…」 「俺達はどちらかが居なくなっちゃ駄目なんだよ。二人、一緒じゃないと…」 晴矢の瞳から涙が一筋零れた。 「両方死んだも…同じなんだよ……」 私の冷たくなった瞳からも暖かいものが流れ落ちる。 両方死んだも同じ。 それならば、晴矢。 「一緒に逝こう。」 「今からそっちに逝くから。」 私たちは離れてはいけないんだ。 「大好きだよ。」 End |