日焼けダーリン 「松野ぉおお!!!!!」 夏休みも終盤に差し掛かった夏の午後。 学生たちは残り少ない夏休みを前に少しセンチメンタルな気分になっている中、松野の家にそんな気分を微塵も感じさせない怒涛な声が響いた。 「んぁ…? あ、半田くんじゃーん。」 その声の人物は松野の恋人、半田真一だ。 松野は半田が自分の家の扉を開けたやいなや半田が次の言葉を口する前にウェルカムな雰囲気で半田を向かい入れた。 「どうしたの、突然。半田がわざわざ僕の家まで来るなんて。」 「どうしたのこうしたのじゃねぇーよ、お前なあ」 「あ、もしかして寂しくなっちゃった? 僕に会えなくて寂しくなっちゃった?」 「ちげぇーよ。ってか、人の話を聞け!!!」 半田は松野の自分勝手な妄想話にキレながら「これをみろ!!!」とこんがり焼けた自分の首筋を松野に見せてきた。 「あら、半田くん。大胆だねえ、こんなとこ見せてくるなんて。」 「ちっがう!!! ちゃんとみろ! こ、こ!!」 案の定な松野の言動に言葉を荒げながら半田はこんがり焼けた部分よりも若干白い部分を指差した。松野は「はいはい。」等と面倒臭そうに半田の指差した部分を覗き込んだ。 そこには、小麦色の肌からくっきりと解るように白い線で『中途半田大好き』と書かれていた。 松野はその跡を確認し恋人にはバレないように軽く顔を歪ませ、何食わぬ顔で「何??」と間の抜けた返答を返した。 「何、じゃねぇ! しらばっくれんなよな!! 松野だろ! こんなことやったの!!」 「えー…うーん…。バレちゃった??」 「バレ…って! やっぱり松野か! あ〜!もうっ!どうすんだよ、これ??!」 松野はあはは、と笑ってはぐらかそうとしたが、それでも半田は許してくれそうな感じではない。ギッと松野を鋭く睨みつけている。 「どうするって…。そりゃ、日焼けが治るまでそのまんまだねえ。中途半田くん。」 のたりくらりな返答。 ついに半田は「はあっ??!」と大声を出し怒りをあらわにした。 「なんっ、だよ、それ! 松野がやったんだろ?! なのにっ、その反応!! 自分勝手すぎる… うわぁあ!」 と、突然だった。 首筋を撫でられたのは。 半田は目を大きく見開きながら、上から自分の首筋を見ている松野の方を振り向いた。 「松野なに、すんだ」 「思い出だよ」 「はあ?」 意味のわからない言葉に半田は眉間に皺を寄せる。 「夏の思い出。僕と半田が一緒にいたっていう思い出。」 松野はそうゆうと、白い跡のまわりにゆっくりと指でハートを書いた。 「ね?」 そしてあの無邪気な顔でニッコリと笑った。半田はその笑顔にかあっと顔を赤くする。 「おもっ思い出って…他にもあるだろっ…」 ぷいと赤くなった顔を隠すため松野から顔を背けると、松野はくすと笑い声を零しながら赤い半田の顎を持ち上げ自分の方を向かせた。そして、再度口を開く。 「あと、半田の困った顔が見たかったから。」 世間の夏休みももうすぐ終盤。 「…………………………。」 「? 半田〜??」 けれど、まだ太陽は暑く僕らを照らしているから。 まだまだこの跡は消えない。 「ふざけるなぁぁあああああ!!!!!!!」 跡が消えるまでが、僕らの夏休み。 (でもそんなに嫌な気はしなくもなくなくない。) End |