手の平には薄荷 ガサッ お気に入りのパーカーのポケットに手を突っ込こみ、あ。と思った。ポケットの中で何か、ビニール袋の固い部分が指先に当たった。洗濯されたのに無事救出できたラッキーな何か。俺は急いでポケットの中身を引っ張り出して、その2秒後にはがっくりと肩をおとした。 ポケットを叩いて出てきたもの。 「ちぇ、ツイてねぇな。」 小さな緑色の文字でサク○ドロップとかかれた小さな飴玉。中味は透明の袋のおかげで一目でわかるようになっている。一目でわかるようになっているからこそ俺は溜息をついた。俺の手の平の上に乗っかっている飴玉は、緑色の文字の隙間からその憎たらしい程の白を覗かせていた。それは誰がどうみても、100人中100人が口を揃えて言うだろう。 「あ、薄荷だ。」 と。 例えそれが捻くれ代表のこいつでも。 「松野。」 「やほー。」 いつの間にかに隣にいた松野は、俺の手の平の上にあるものを見て、お得意の人を小馬鹿にしたような微笑を浮かべていた。 「ね、それ、薄荷じゃん。ツイてないね、半田は相変わらず。」 「相変わらず は余計だっつの。」 松野の憎たれ口に多少の腹を立てながらも、俺はペリッと薄荷味の入った袋を開けた。中からころんと白いアイツが姿を現す。 「食べれんの?」 「だって、勿体ないだろ。」 「…………ふぅん。」 何故か不服な松野を横目に俺は薄荷味の飴玉を口の中に放り込んだ。スゥー、と薄荷特有の味が口の中を占領し始め、それに比例するように俺の顔も苦みを増す。舐めはじめた途中で、少し後悔をした。 やっぱり、薄荷は嫌いだ。 「…………、」 「美味しい?」 「…この顔見て、そう思うか?」 俺は隣でニヤニヤしながら苦みに耐えている俺を見ている松野をキッと軽く睨みつけた。が、松野はそんなきつい(俺だからか?)視線も気にせず、今度はクスクス笑いはじめた。まぁ、やっぱり、腹は立つから無言で1回、松野の愉快なニット帽を叩いてやった。 「痛っ、何すんの!」 「何って、ムカつくから。」 「そ、そんな理由で?! ひどーい。」 「うるせー。」 全く、今は冗談を聞いてる暇はないんだ、と顔を反らそうとした。 その瞬間だった。 「……?!」 視界がピンクと青に染まる。 そして、唇に柔らかいものが当たる。 口の中に何か入り込み、俺の口内は空っぽになる。 「ん…んん??!」 口内は置いてけぼりのスースー感。 目の前では松野が移動した白いアイツを自らの舌に乗せながら笑っていた。 「僕、薄荷ってだーいすき。」 俺の顔は今、きっと酷いことになっているだろう。 やっぱり、薄荷なんて 大嫌い。 うらオモテの感情デ。 ダい好キ。 End |