短編 | ナノ



一万回の愛してる。




ねえ、僕はこんなに君の事が好きなのに。

なのに、なんで君はいつも





「はぁー、いーい天気だなぁ。」


いつもの時間、いつもの場所。
この狭い校内の中で1番空に近い場所で僕の大好きな恋人、半田は一つ気持ち良さそうに伸びをする。僕はその隣でフェンスに寄り掛かりながらそんな半田を見つめた。半田の柔らかな茶色の髪はひらひらと僕の目の前で風に靡いている。なんだか何処か異国の踊り子のようにも見えるその髪の毛は僕に余計に愛おしいと思いさせた。すると、その気持ちが顔に出てしまったのか半田に怪訝な顔をされながら僕の緩みきった頬をぐいっと抓られた。じぃん、と鈍い痛みが頬の一部に広がる。


「何、すんだよー。」


僕がひとつ、そう文句を半田に向かって吐くと彼はにやりと目尻に皺をつけながらこちらに向かって微笑んだ。そして、「変な顔。」と一言。それから、何が可笑しいのかぷぷっと吹き出し始めたものだから僕はそんな半田の態度にムッとした表情を見せた。すると、なんと、まぁ。半田は僕に向かってまた「変な顔。」って言ってきた。さすがに2回も「変な顔」など言われてしまってはこちらのプライドも黙ってはいない。僕も仕返しに半田の健康な茶色の、しかし赤子のようにすべすべの肌を1回引っ張った。すると、思惑通り、半田は先程の余裕ぶった腹の立つ顔を消し、痛みに顔を歪ませた。


「はは、半田も変な顔ー。」
「いっひゃいよ!! はははふの!!」


頬を抓られた半田は上手く喋れていない。そんな半田が僕には余計に愛おしく思える。そして、僕の空いたもう片方の腕はゆっくりと半田の背中に回っていった。僕らの距離はぐぃっと近づく。半田はいきなりの展開についていけていない様子のようで、頬を抓られたまま、あの可愛らしい声で僕の名を呼んだ。それがまた余計に僕をそそる。僕は返事の代わりに優しく彼を抱きしめた。半田の頬にあった手はいつの間にかにもう1本の腕に重なるように半田の背中に回っていた。


「…半田?」


半田の温もりを感じながら、彼の名を呼ぶ。すると彼も合図の代わりにすり、と神経を集中させていないと気づかない程の動きで僕の胸に頭を押し付けてきた。そんな照れ屋な彼をもう一度優しく抱きしめた。半田の温度と僕の温度が混じり始める。


「好きだよ。」


お決まりの愛の文句を彼に囁く。そして、それと同時に愛おしく、大好きな香りと温もりが僕を包んだ。

ああ、君のにおいだ。

こうなってしまったら、もう遅い。僕は狂ったように半田に愛の言葉を囁き続けた。何回も、何回も。

けれど、きっと、解っている。


「松野、松野。」


君が僕の名を呼ぶ度に、僕から君への愛の言葉の量が増えるのを。
君を感じる度に、僕の気持ちが溢れて止まないことを。
僕は知っているから。


「大好き、愛してる。」


だからこそ。
何回も囁き、叫び続けたいんだ。
きっと、一生かかっても伝えきれないこの思いを。
少しでも1%でも君に多く伝えたいんだ。

100回の言葉でも足りない。
1000回のプロポーズでも足りない。
10000回の愛してるでも足りない。

こんな気持ちを君に伝えるの。


「松野」
「大好き。好き。」


全部、全部、全部。
余すことなく、君に伝えるんだ。


「………ありがとう、松野。」


いつか君に最期の愛してるを言うまで。


「俺も松野が好き。」


君に叫び続けよう。






一回の君に一万回の僕を、






End








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