短編 | ナノ



さよなら、チェリー

(中三パロ)




あおーげばー とおーとしー …


さっき、もうこれで別れる仲間と歌った卒業定番のメロディーが頭の中を無限ループしている。
俺は、そのメロディーをゆっくりと噛み締めながら3年間、ずっと通いつづけた雷門中学の屋上に寝転がってボーッと空を見上げていた。
空を見上げている理由なんかは特にはないのだけれど。
このまま、家に帰るのも勿体ない、という貧乏性な考えが俺をここにとどませているのかもしれない。


「はぁ 実感、わかね〜…」


今日は、一生に一度っきりの中学の卒業式。
ほんの30分前までは、皆わんわん泣いていた。
それが、今はこれだ。
こんな所で一人でポツンといる。
実感が湧かないのも無理ないだろう。
唯一、卒業、というものを意識させるものと言えばこの3年間連れ添ってきた学ランの胸ポッケに滑稽にささった一輪の造花と横にコロリと転がった、黒い筒に包まれた卒業証書くらいだ。
これ以外は、昨日と、いやあの日と、全然変わらない。
3月なのにまだ少し肌寒い空も、それなのに澄み渡った青空も


「………、」


あの日と何も変わっちゃいないんだ。
唯一変わった、と言うのならば、それは


「あ、いた。」
「………」


屋上の扉のキィ、という錆び付いた音がより一層、高く鳴くようになったくらいだろう。


「どうしたの? 半田、」


ほら、こうやって、あの日も君は俺を見下ろしていた。


「いや、別に。」


俺は、目の前で大きな黒目がちの目をくりくりとさせている松野を見て、柔らかな笑みを少し漏らす。


あの日も、君は、どうしたの? と聞いた。
あぁ、そしてこう言ったんだよな。


「半端くん?」


ほら、

ほら、ね。

何も変わってはいないんだ。


「……うぜ。」
「ふふっ、懐かしいね。」


松野は、俺の横に腰を下ろしながらそう笑った。
その笑い声はなぜだか切なく感じた。
多分、それは目の前に広がる青空のせい。


「あの日もさ、…僕が半田に告白した日、覚えてる??」
「…あぁ。あの日もお前、俺のこと半端って呼んだよな。」


少し自虐的だっただろうか。
松野は俺の言葉にははっと乾いた笑い声をあげた。


「そうだっけ? でもさ、あの日もこんな、こんな日だったよねぇ。」


サァ、と優しい風が俺の上を吹き抜ける。


「そう、思うと何も変わってないんだね。ここは、」
「うん…。」


きっと、この先もそうだろう。

俺がどんなに成長して大人になっても、死んでしまったとしてもこの空はそんなことはどうでもいいのだろう。

ただ、ゆっくり、地球の回りを泳ぐだけ。

それだけ。

何も、変わったりはしないのだ。
変わるのは、変わることを望む人間だけ。


「ねぇ、半田。」


冷たい地面に触れている俺の手に、暖かい温度が流れる。
俺は「ん?」と、体を起こして松野を見た。
松野はニコリと笑う。


「ここが変わらないように、僕も半田の事を好きなのは、あの日から変わらないよ。」


下の方から、友と別れを告げる様々な声が聞こえる。


「………俺も。」


そんな中をこの無関心空はゆったり泳ぐ。
俺達は、あの日と同じように影を重ねている。


ずっと、これからさきも、きっと、

変わらずに。

君を愛しつづけるよ。




End




わーい わけわかめ\^o^/








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