大好き、好き、Love!! 「ねぇ、土門ー。」 アメリカでのサッカー練習後。 土門は、幼なじみで同じチームメンバーの一之瀬一哉に呼び止められた。まぁ、呼び止められたと言ってもいつもの事なのだが。 多分、この後は 「この腰たまんないよねっ」 と、自分の腰に抱きついてくる。ほら。 土門はもう何百回目のその行為に溜息をつく。 「いつもそれだな、一之瀬。」 「へへー だって、好きなんだもん。」 一之瀬はそう言うと、無邪気な笑顔を土門に向けた。土門はその笑顔と言葉に多少顔を赤く染めながらも「はいはい。」と言い、ロッカールームに一之瀬と戻った。 「ねーぇー、土門ーーん」 ロッカールームに戻るやいなや。 一之瀬はまた土門の腰に細く綺麗な腕を絡ます。 「なんだ、今度は?」 土門は調度上のユニフォームを脱ごうとしていた時だったが、一之瀬の腕が邪魔でユニフォームが脱げない。怪訝な顔をしながら一之瀬の腕を退けようとしながら口を開く。 「退けようとしないでよ。…うん、あのさ、あのさっ!!」 「だって、邪魔だろ。…で、何?」 土門は、邪魔、と言っても腕を退けようとしない一之瀬を諦め腰に腕を絡ましたままで一之瀬の次の言葉を待つことにした。 「うんっ、やっぱりさ、プロポーズの言葉は『子供を作ろうっ』かな??」 純粋無垢笑顔のままでそんな大人の言葉を口にする一之瀬を土門は頬を引き攣らせなが見た。 「…は?」 「だからぁ、プロポーズの言葉は『こど…」 「もういい、もういい、何も言うな。」 「? なんで?」 「なんでも。…で、何? プロポーズの言葉ぁ?」 「うん、そうっ。何が言いと思う?」 何をいきなり言い出すんだ? こいつは。 土門は全く、と大袈裟に溜息をつきながらも一之瀬の質問の答えを考えていた。そんな土門を一之瀬はあの笑顔のまま見つめていた。 「プロポーズ…ねぇ…。あ、『俺に毎日みそ汁を作ってくれ。』とか?」 土門は、思い付いたように右の人差し指を一本立てながら言った。すると、一之瀬は一瞬、大きな目を更に大きく丸く開けると、次は大きな声で笑い始めた。 「はははははっ!! 何、それっ! 初めて聞いたよ! はははははっ!!!」 「えっ、なっ、にっ日本では言うんだぜ?」 「昭和とかでしょ〜?? 今時言わないよ〜!」 一之瀬は、ひとしきり笑うと目尻にうっすら浮かんだ笑い過ぎによって出た涙を自分で掬い、土門の腰に絡ましてた腕をすっと解いた。そして「まぁ、いいや、それでも。」と言い頭一つ分違う土門のほうを向いた。土門はそんな一之瀬を頭に沢山のハテナを浮かべながら見つめ返した。 「土門っ、」 「はい?」 「俺に毎日、みそ汁作ってくれっ」 一之瀬は、笑顔のまま。 土門は、どんどん表情を「有り得ない」表情にしていく。 「プロポーズだよっ」 「…………………は?」 何がなんだか、さっぱり解らない。 一之瀬が何が言いたいのかも、解らない。 とりあえず、ハテナはさっきの2倍の量になった。 「だからぁ、土門はさ、鈍感じゃん? だから、もうプロポーズしちゃおうかな、と。」 一之瀬は眉を少し潜めながら、呆れた顔で言った。 いや、呆れた顔をするのはこっちもなのだが。 「え、え? 一之瀬、え? お前、俺の事、好きなのか?」 とりあえず、1番の疑問を聞いてみる。 すると、一之瀬は顔を突然赤くし始めて目を背けた。 「そ、そうだよ、っ。いつも、好き、って言ってんのにわかんなかったの??」 「解らないよ、そんなの。第一それ全部腰かと思ってたし。」 「腰っ??! 有り得ない!! 有り得ないよ、土門!! 腰も好きだけど!!」 一之瀬は、顔を本当に有り得ないものを見るような顔をして「もう、いいよ。」と言い捨て、土門に背を向けた。 土門はそんな一之瀬を見て、苦笑を漏らす。 全く、本当に一之瀬は解らない。 いつもはあんなふうに腰に抱きついてきたりするくせに、「好きなの?」と聞くと顔を赤くするところとか。 いきなり、プロポーズをしてきたりするところとか。 けれど、 土門は、口元を緩め、今度は逆に一之瀬の腰に抱きついた。 一之瀬は突然の土門の行動に変な声を上げ、土門の方を振り向いた。 「いいよ、毎日、みそ汁作ってやる。」 けれど、けれども。 そんな君が俺は好きなのかもしれない。 毎日、嫌と言うほどみそ汁を作ってやろう、その笑顔に誓って。 End |