短編 | ナノ



僕の温度<君の温度




ひゅううう……


北風が辛い12月初旬。
僕らは中学の帰り道を歩いていた。


「うぅ…さみぃ…」


俺、半田真一は寒さにはめっぽう弱い。
だから、冬は四季の中で1番苦手だ。


「あははっ 半田の鼻真っ赤だね〜。」


隣で俺の真っ赤になった鼻を笑うのは松野空介。
みんな、マックスって呼んでるけど俺は松野って呼んでる。


「…うるさいなぁ。寒いんだからしょうがないだろ。」

「半田が寒がりすぎなんでしょー。」


松野はあははっと猫目をきゅうとつぶしながら笑った。


「俺は寒いのが苦手なんだよっ。」

「マフラーもコートもこんなに着込んでいるのに〜??」

「……手袋。手袋がないんだよ、手袋が。」


コート等をたくさん着込んでモコモコしている俺は隣でずぅーっと笑っている松野を横目に裸の手の平を見つめた。


「ほら。」

「僕なんか、コートもマフラーも着てないよ。学ランの下にセーター1枚だけー。」


松野は、そう言いながら学ランの下に着ている紺色のセーターを見せてきた。
俺は裸の手の平を見せながら、有り得ないという目で松野を見る。


「って、半田、その手どうしたの?」


寒がりでは俺の方が一枚上手でしぶしぶてコートのポケットに突っ込もうとした手を松野に捕まれた。


「うわっ なんだよ いきなり。」

「なんだよ いきなり、じゃないよ。カサカサじゃん 手。しかも冷たいし。」

「うっさいなぁ。乾燥肌で冷え症なの。俺は。」

「女の子みたい。」


松野は俺の手をぎゅうと握りながら、何か可哀相なものを見る目で俺を見てきた。


「いいだろ、別に… …松野の手、物凄いあったかい。」


人の体温など、触れてみて初めて解るものだ。俺の手が冷た過ぎるのかどうかは解らないが。

松野の手は物凄く、暖かかった。


「こーゆーの子供体温ってゆうんだっけ。」

「うるさい。」

「平温いくつ?」

「……36度5分」

「あったけぇーっ」


あはははって俺が松野の手をぎゅうと握りながら笑っていると松野はむっと眉を寄せた。


「うわぁっ!」


いきなり、松野に手を下に引っ張られた。


「冷え症は冷え症らしく温められてたらいーのっ。」


手は松野の暖かさと松野の学ランの暖かさに包まれていた。


「…なっ何 すんだよ。」

「温めてあげようかと思ってね〜。」

「………ばっかじゃないの。」

「あははは。」


握られた手はほんのり温かくて、鼻と同じくらいほっぺも赤くなっていた。



(冬も悪くはないかな。)


〜End〜











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