短編 | ナノ



嘘つきblood

(マックス目線)




「…」


君は今日も制服の袖口に一本のカッターナイフを隠し、屋上に向かう。
回りはそんな君をまるで空気の様に扱っていた。

けど、僕は知っているよ。
君が屋上で何をしているか。


「…っ…」


僕は、知っているよ。
僕の他に君を見ている小さな目があることを。


「…、」


今日の天気は、綺麗な青空が広がり、気持ちも明るく過ごしやすい天気になるでしょう。


朝、あまり可愛くないアナウンサーがニコニコと笑いながらそう言っていた。
僕はいつもそれを見る度に思う。

天気くらいで、僕の気持ちは過ごしやすくなんかならない。

って。
だって、そうだろう?
もし、それが本当だったとしたら、今の僕はこんな気持ちにはならない。


嘘つき、嘘つき。嘘つき、




ガタンッ


突然、椅子が大きく床に擦れる音がした。


「…、おかしいだろっ…?!」


教室の空気が一気に音のした方向、風丸の方向に向けられた。
風丸は、肩で静かに息をして、その空気を睨みつけていた。
教室はシィンと、まるで時が止まったように静まる。


「……、、」


僕はその空気の中、誰にも気づかれないように喉を撥ねらす。
嫌な予感が胸を過ぎった。


「…ふざけんなよ、なっ…!!!」


風丸はそう、一言投げ捨てるように言い放つと教室を走ってでていった。
足は、屋上、君のいる所を指していた。


まさか、まさか。まさか。


ドクン、と心臓が音を鳴らす。
空気はピタリと止まったまま。
僕の中に焦りがうごめいた。


ガタンッ


僕の中の、汚い、醜い、焦りが。


気づくと、僕の足も風丸と同じ方向を目指していた。

僕らがでていった教室は、僕らがでていった2秒後くらいには前と同じ賑やかさを取り戻し、何事もなかったかのように雷門中学に馴染んでいった。




足の速い風丸には、やっぱり追いつけず、僕が君の元へ着いた頃には、ガランと屋上のアルミで出来た扉がキィキィと金属の擦れる音を経てて既に開いていた。


「はぁ、…はぁ、」


肺が飛び出しそうな感触を押し殺しながら、一歩、屋上に足を踏み出した。

時、既に遅し。



「……な、んで、くる…んだよ…?」



抱きしめてたら壊れてしまいそうな君の声が聞こえた。
勿論、それは僕に向けられた言葉ではなかったが。


「なんで…って、当たり前だろう。」


綺麗な青い髪をサラサラと風に靡かせているアイツに向けられた言葉。
その事実がツンっと僕の鼻を痛める。


「お前が…、半田が心配だから。」
「ふ、ふざけんなっ!!!!」


君はアイツの言葉に大きく手を振りあげ、反抗した。
その反動で、袖口から、真っ赤な血が地面に滴った。


「ほら、」


アイツは、悲しそうな顔をしてその血が流れた腕を取り、シュルリと自分のハンカチで巻いてやる。
その行動に、君は真っ茶色の綺麗な瞳を大粒の涙で揺らしながら静かに見ていた、


ほら、ほら。ほら、


「半田、お前は一人なんかじゃない。」


ザァッと、優しい風が二人を包む。
地面は、滴る血と君の涙で綺麗に染まる。


僕は。

僕は、やっぱり、


「…………………」


キィと、扉が一つ、揺れた。



なぜだろう。
君のことが大好きなのに。
どうして、僕はこんなにも無力なのだろう。



End












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