短編 | ナノ



思春期ラブレター




「松野くん…いいですか…?」


放課後の教室、隣のクラスの女子が3人、ドアから顔を覗かせていた。




パタパタパタパタ…


女子達の高音の声が聞こえた。
と、思ったらすぐに複数で上履きでかける音がし、教室の扉から淡いピンク色のハートのシールがちょこんと恥ずかしそうに貼ってある封筒を持っている松野が入って来た。


「たっだいまー。」

「…お帰り。 ……ラブレター?」

「えー? あー うん。羨ましい?」

「別に。」


にやっと俺を見下すような顔で見てきたので、顔を背ける。
すると、松野はくすっと持ち前の小ばかにした声で笑ってきた。


「なんだよ。」

「べっつにぃーっ」


俺の答えの何が面白いのかまたくすくすっと笑ってくる。


「別に、俺は、松野みたいには、モテないし。」

「…………………ぶっはっ!!」


何かが爆発したらしい。
松野は真っ黒な猫目にきゅうと涙を浮かべながら笑い出した。


「なっなんだよっ!!」

「あはははっ 半田がひがんでるーっ 半田の癖にっ!!」

「!!」


失礼なっ!!


「ひっひがんでなんかないよ!」

「ひがんでるよー だって、僕がラブレターもらってるときの半田の顔、凄かったよ?」

「はぁっ??!」


俺はぱちんっと自分の頬を両手で挟み、自分の表情を確かめてみる。
確かに、口が曲がってる気はしているが決してひがんでいるつもりはない。
と、松野に言い返そうとした瞬間だった。


ぐいっ


「!?」


突然、学ランの襟首を掴まれたと思ったら、次の瞬間、松野の猫目が俺の顔の目の前に、間近に、笑っていた。


「…っ?」

「…半田 さ、勿論、」


松野の息がかかり、胸の鼓動はより一層スピードをあげてくる。


「女の子にひがんでるんだよ ねぇ?」


どきんっ


胸が跳ね上がった、気がした。
多分、顔が真っ赤になってるだろうな。
だって、こんなに、身体が熱を放っているんだもん。


「………は…?」


松野はにやりと笑っていた。


「僕は、半田だけにモテたいんだ。」


顔の熱がピークになる。
鼓動はもうMAXスピード。
もう、松野に聞こえてしまうのではないだろうか。


「わかる?」


と、同時にパッと襟首を離された。
俺はキッと松野を睨む。


「松野は…思春期…なの?」


こんなことするのは、多分そのせい。


「うーん、そう。」


この、面倒臭い時期のせい。



End












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