短編 | ナノ



迷惑電話




冬の寒さに比例するように、俺の体調は悪くなってきた。
頭がガンガンする。吐き気も酷い。
ごみ箱は先程から大量に鼻水をかんだティッシュが今にも爆発しそうな勢いで詰め込んであった。
俺はというと、今日何枚目かの冷えピタを頭に乗せ、「ゔーゔー」と一見怪物のような呻き声をあげながらベッドで寝ている。

全く、こんな時期に熱なんか出して俺は…。間抜けにも程がある。

熱の為に上がった息か、それとも単なる溜息かは解らないが口から情けない息が吐き出される。
しかし、そんな自己嫌悪など出来るくらいまだ体調は回復していないため意識は朦朧としてきた。


「…はぁ……………はぁ………」


さっき、昼食後に飲んだ薬が効いてきたのか瞼がだんだんと重くなってきた。
気づくと、闇に包まれ俺は眠りについた。




 ………


ぴる..ぴるるる ぴるるる ぴるるる.....


「…」


突如、部屋に規則正しい携帯電話の電子音が鳴り響き俺の心地好い眠りは瞬くまに邪魔をされた。

誰だ、折角良い眠りにつけていたというのに。

多少、眉間に皺を寄せながら重い身体を携帯電話の方に持って行った。
ディスプレイには青白く光を放った文字で着信を示す電話のマークと、


「…」


マルコ という文字が浮かび上がっていた。

まぁ、こんなタイミング悪く電話をかけてくる奴なんてあいつしかいないだろう。
3回目の電子音が鳴ったと同時に俺は電話マークのボタンを押した。


「もしも…」

『ジャンルカっ 熱出したってほんとかっ?!』

「…っ」


電話に出て早々、マルコの馬鹿でかい声が俺の耳をつんざく。キーンと耳が鳴る。


「…声、でかいよ。マルコ…」

『んなの、関係ないよっ!! で、本当なの?』


マルコは何故か切羽詰まったような声だった。


「…あぁ。…っていうかなんで知ってるんだ?」


俺が熱を出したことはフィディオにしか言っていないはずだ。
あぁ…そうか、


『フィディオから聞いた!!』

「だろうな。」


あの心配性なフィディオだ。
俺が熱を出したなんか言ったらすぐに皆に言うだろうな。


『そんなことはどうでもよくって!!! 熱、大丈夫か?』

「…あぁ…まぁ今朝よりかはだいぶ。」


寝たからなのか、さっきよりかは身体も重くないし鼻も咳もひどくはない。


『そっか。良かったっ』


受話器の向こうの君の表情は解らないが、声の調子で大体は予想できる。
多分、今、君は凄く安心しきった顔をしているのだろう。
そんな君を思い浮かべているとまた熱があがったのか、顔が真っ赤に染まっていた。


「………………あ ぁ。サンキュー。」

『ふふ いや。ジャンルカが元気そうでよかった。』

「あ あぁ」


元気…
あぁ、確かに。
うん。


「マルコから電話をかけてもらったから元気になったのかもな。」

『…はっ?』


だって、そうだろ。


『ばっかじゃないの。』

「へ? 何が?」

『…天然。じゃあ もう元気になったなら電話切るからねっ』

「えっ あっあぁ。」


何故かマルコは怒っていて、


すきだよ。


「っ!!!」


俺の中で新しい熱を生み出した。




End












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