真っ赤なサンタ 町はキラキラ キラキラ。クリスマス仕様。あっちもそっちも綺麗に着飾っている。 今日は恋人達のクリスマス。まぁ、俺にはそんな相手いないから今日もいつもと同じように松野と遊ぶ予定を作り、こうしててっぺんに大きな星をつけた松の木の前で松野を待っている。 約束の時間を過ぎた、今でも。 「…はぁ」 松野が時間にルーズなのはいつものことだ。しかし、今回は訳が違う。約束の時間をもう1時間も過ぎている。俺は今日で何度目かの溜息をついた。その溜息はクリスマスの冷たく寒い空気により真っ白に染まってゆく。 ケータイを取り出し、電話をかけようと思うが多分無理だろうと思い、ポケットにもう一度しまう。だってもう10回は電話した。メールだって5通は送った。なのに、松野からは1回も1通返ってこないのだから。 なんだか、悲しくなってくる。 捨てられた気分になる。 いや、もしかしたら本当にそうなのかもしれない。 俺以外のやつと、女と、俺を忘れてしまうくらい大好きなやつと一緒にいるのかもしれない。 そうだったら、ここで1時間も待っている俺があまりに惨めだ。 情けない。 「……っく」 あぁ、ダメだなぁ、俺は。涙が零れそうだ。 目尻はじわりと熱くなり、鼻の奥がツーンとしてくる。 目の前のイルミネーションはだんだんと掠れてきた。 泣くな、泣くな、半田真一。 ギリリと唇を噛み締めて、涙をこらえる。 しかし、それとは裏腹に頭の中には自分以外の人間と楽しくクリスマスを過ごしている松野が浮かび上がってくる。 あぁ、あぁ、あぁ… 「……っふぇ」 惨め。 目からはポロポロと涙が溢れだしてきた。 もう、その涙は止まらない。 ポロポロ、ポロポロと次から次へと溢れだしてくる。 と、その時だった。 「半田!!!!」 後ろから、愛おしい声が聞こえたのは。 「!!」 大好きな、松野の声。 「ど して…」 「…はぁっ…待ってたの…? ずっと?」 松野は真っ赤なコートを着ていて、はぁはぁと息をきらしていた。 「走って…きたの?」 「当たり前でしょ。…ってか、半田こそ…」 松野は大きな黒い瞳を優しくさせ、僕を見つめ、くすりと俺の真っ赤になった鼻に触れた。 「寒くなかった? ごめん。」 それから、俺をぎゅと抱きしめた。 松野の体温はじわりと俺の体に伝わり安心した。 「………寒かった…」 「あほだなぁ…帰っても良かったのに…。」 「やだよ、松野と約束したのに。」 「……半田、」 そっと松野が俺を離し、ポケットを何やらごそごそし始めた。 「?」 「クリスマスプレゼント。」 そう言った松野の手の平にはちょこんと銀色のネックレスが置いてあった。 「へ?」 俺は突然過ぎて、間抜けな声を出してしまった。 「これ、買ってたから遅刻したの。」 「……ばか」 良かった。 松野が俺じゃない人間と一緒にいなくて。 「ははっ。…………半田、」 町はキラキラ キラキラ。イルミネーション。 恋人達のクリスマス。 銀色のネックレスは光に反射してとても綺麗。 俺の目の前には真っ赤なコートをきたサンタさん。 「好きだよ。」 幸せを運んで。 End |