君が居たから(うたプリ)
(砂那翔:砂月消化パロ)
「…よお。」
「…砂月。」
那月が倒れたって聞いたから急いで寮に戻ったら、倒れていた、いや倒れている筈の那月が上体だけを上げてベッドに座っていた。そして部屋に駆け込んできた俺に気付いたのか、那月が浮かべる笑顔とは全く違う笑顔を浮かべながら片手を上げて挨拶をしてきた。
その瞬間、分かったんだ。
「なんだ、その面。」
砂月はははっと笑ったが何時までも黙っている俺を見ていつもの自我を護ることで精一杯の『砂月』の顔に戻った。
「…分かったような、顔、してんなよ。」
それから、泣きそうな顔をした。
「お前、もう時間なんだな。」
俺がそう言うと砂月は泣きそうになりながらも自虐的な笑みを浮かべた。そんな表情を見てるとこっちも辛くなる。
「ああ、そうだ。…返してやるよ那月。」
昔は砂月が大嫌いだった。訳わかんないし、無駄に怪力だし、直ぐ怒るしかと思えばスゲェ気持ち悪いことしてくるし。とにかく大嫌いだった。でも、どうしてだろう。
「違げぇよ。アホ。」
「は?」
砂月はいきなりの俺の暴言にいらついたように顔を歪ませた。そりゃ、そうだ俺だって戸惑ってるさ。
「預かる、んだ。那月を!」
大嫌いな奴がやっと消えてくるっていうのに。
なんで、なんで。
「お前、なんで、泣いてんだ…?」
なんで泣いてんだよ、俺…
「うっせぇうっせぇ!俺はなっ、チビの頃から見てんだよ!那月もっ、お前もっ!」
そうだ。何時も見てた。
俺を可愛い可愛い言って抱き着いてくる那月を。
那月を誰よりも大切にして守ってきた砂月を。
両方、ずっと見てたんだ。
「だからっ、分かる!お前がっ、どれだけ那月を大切にしてきたか… どれだけ色んなものからアイツを守ってきたか…」
「は…?お前…何言って…」
砂月が戸惑ったように俺を見つめてくるが、涙はぽろぽろぽろぽろ情けなく零れ、止まらなかった。
「分かってる…から……」
涙で視界が見えなくなるのを防ごうとぎゅうと自分の拳を握りしめた。けれどそんな事をしたって効果は無く、涙はどんどん溢れ出てきた。
「感謝、してるんだお前に…。いつも那月を守ってくれてありがとうって。那月を誰よりも大切にしてくれてありがとうって。」
涙の所為で目の前がぐちゃぐちゃになりすぎて砂月の表情も分からないが多分アイツも泣いてるんだろ。大きな肩が震えてる。
「大丈夫、お前が消えちまっても、今度は俺があいつを守るから。」
「翔…』
大丈夫。
那月も、お前の意思も全部俺が守ってやるから。
「ありがとう」
『ありがとう』
最後にみた砂月の表情は、那月よりも遥かに優しい笑顔だった。
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