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お伽草子



絵本を閉じて、街へ飛び出した。
なにか起こらないかと淡い期待を抱きながら。
玄関は不思議へ国へと僕を誘う入り口に見え、お気に入りの青のカッコいい靴はこれから待ち受ける旅を表すようだった。
そして、僕は意気揚々と街へ繰り出すんだ。


「…懐かしいなあ」

部屋の掃除をしていたら子供の頃、大好きだった絵本が出てきた。この絵本に出てくる主人公のようにいつか旅に出たいと思っていた。
なにか起きないかという期待だけを持って外に出てみても、広がるのはいつも通りの町並みだけだった。
大人になるにつれ、そんな裏切られ続けた期待も薄れていき、いつの間にかに、この街にはなにも起こらないと言うことを知ってしまっていた。

僕は絵本を手にとり、汚れた絵本の表紙を見つめる。
外に出るときはいつも持っていた絵本。
思えば、この絵本が僕を導いてくれた地図だった。

「君も一緒に行くかい?」

無造作にリュックサックの中に絵本を詰めた。

いつの間にかに知ってしまっていた。
なにか起こるのは、なにか起こさなければならないのだ。

僕はこれからこの広い世界を旅にまわる。


絵本を閉じて街へ飛び出す。












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