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流るる涙に深紅の接吻を


黒子のバスケ 黄黒


何時もと同じように彼に近づき、頬に不意打ちのキスを落とす。すると彼、黒子は表情の少ない目のまま無言で軽く濡れた白い頬を細い手で拭った。俺は何故かその動作に無駄に嫌気がさす。それが原因なのかは解らないがいつの間にかに俺の腕は彼の細い腕を捕らえていた。まだまだ自分も子供なのかもしれない、と勝手に自己分析しては俺はまた彼の腕を強く絞めた。


「不愉快です」


そう呟く彼の目は相変わらず表情が少ない。嫌がっているかどうかわかるのはその言葉だけだ。俺はそんな君が悪いと言わんばかりにニヤリと口角をあげた。


「可愛かったから、じゃダメっスか?」


ぱし、と手を払われた。いい加減にしてください、とも言われた。払われた手は情けなく宙を舞い俺の傍に落ちる。そして自身で自身の腕に赤を散らした。
何故だろうか。何故こんなにも俺の気持ちは貴方に届かないのだろうか。こんなにも貴方を愛しているのに。誰よりも貴方が一番なのに。伝える術を全て使っているのに。どうして?貴方は何がまだ足りない?


「黄瀬くん、」


彼の声が俺を呼んだ。


「なんスか?黒子っち」
「貴方は僕が好きなんですか?」


彼は俺の言葉を遮るように言葉を続けた。その目は真剣そのもので、これ以上言葉を続けることが出来なくなった。
貴方は僕が好きなんですか
そんなの好きに決まっているだろう。好きで好きでたまらないんだ。
しかし黒子っちは俺が口を紡ぐんでしまったことが自分への問いの答だと思ったのか、俺を一瞥しその場を離れようと足を動かした。
嗚呼、行かないでくれ。


「くろ、こっ、ち」


気付いたら一回り小さい君が俺の中にいた。抱きしめられている君が驚いているのも無理ないが抱きしめている俺も驚いている。そんな俺に気づいたのか黒子っちは不思議そうに俺を見上げ名前を呼んだ。


「黄瀬くん?」


どうしたんですか、と言われる前に俺が口を開いていた。


「俺、知らないんス。これ以上の愛し方を。好きだ、って伝える術を。」
「…」


ぎゅ、と腕に力を込めると温い彼の体温が感じられた。


「黒子っち?」


俺は貴方を愛す術を多くは知らない。

ちゅ、と軽いリップ音が耳についた。


「黒子っちが、好きっス」


彼の唇がしっとりと濡れた。


「はい」


短い返事だったけど、今度は唇を拭う手は俺の手と重なった。




end









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