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無愛想と優先席


同じ時間に同じ車両でいつも目にする君に僕はいつの間にかに恋をしていた。
大して手を加えていない少し長めの黒髪にちょっと派手な色をした赤いイヤフォンがよく生える。毎日静かに目を閉じ何かの音楽を聴きながら優先席に座っている君を僕は今日もガン見している。これはストーカー行為に当てはまるのかな。いや、でも見てるだけだし。大丈夫だよね。見とれてるだけだから。だって見とれてる、なんてどちらかというとまあどちらかと言わなくても誉め言葉だし。むしろかっこよすぎる君が悪い、みたいな。いつも優先席に堂々と座ってる君が悪い、みたいな。


「ん…?」


いつも優先席に座っている?
いつも、座っている?
ん?なんかそれってすっごくマナー違反、だよね?多分、いやきっとダメなことだよね?だって優先席っていったらお年寄りの人・妊婦さん・怪我をしている人が座る場所でしょ。けど君は制服着てるから言わずもがな学生だろうし男だから妊婦では絶対ないだろうし怪我をしている風でもない。それなのに優先席に座っているだなんて…!!


「カッコいい!!」


じゃなくて!
凄く図太い神経の持ち主なんだね君は。僕なんか優先席なんて優先席を必要としている人がいたら変わろう、変わろう、変わろう変わろう!って思いすぎて逆に緊張してずっと座っていられないのに。君は毎日優先席に座っているなんてやっぱり何か違うんだよなあ周りの人と。まあそこもいいんだけどさ。


「…じゃなくて!」


しーんとした電車内に僕のツッコミが響き渡った。
うわああはずっ!何してんの僕!やめて!そんな目で僕を見ないで!
と、その時。
一人のお年寄りが電車に乗り込んできて優先席に近づいていった。


「あ…」


優先席は君以外にもお年寄りがもうすでに座っており定員オーバーだ。君はどうするのだろうか。僕は他人のことながら胸をドキドキ言わせながら君の行動を見ていた。


「…どうぞ。」


席を立ち上がりお年寄りに席を譲る君。
うわあああ!!!!


「超カッコいい!!!!!」


そしてまた電車内に響き渡る僕の声。


「…いや、普通だろ。」


君と初めての言葉を交わした瞬間。
僕らの乗り込んだ電車は動き出した。













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