木枯らしと。
ぴゅうっ…
冷たい木枯らしが学校帰りの僕らを直撃した。
「ううっ…寒…」
いよいよ今年もこの季節が来た。
僕が1番大好きな季節、冬が来た。
「さっみぃ…ああーもー早く帰ろうぜ〜…」
「えーもう少しゆっくり帰ろうよー。」
君はあんまり、いやかなりこの季節が嫌いらしいけど。
今、凄い顔してるよ。
「やだよ。なんで寒いのにゆっくり帰らなくちゃならないんでーすーかー」
隣で君は真っ赤に染まった鼻をを啜りながらさっさっと木枯らし吹く道を歩いていってしまった。僕はそのあとを鼻唄交じりに追いかけていく。
この時期の君を見るといつも思う。こんな素晴らしい季節が嫌いだなんて全く、人生の8割は損している。と。
冬といえば気持ち悪い虫は少ないし、あったかい食べ物はいっぱい出てくるし、炬燵でぬくぬくするのは最高の幸せだし、真っ赤なサンタクロースとクリスマスだってある。それと小遣い集めには持ってこいのお正月だって来るしね。こんなに楽しいこと盛り沢山の季節は1年365日どこを探したって、この冬の季節だけだ。
なのに、今、僕の前をさっさっと歩いてしまっている君はそれに気づかないなんて。
「……もう。」
でも、大丈夫だよ。今、僕が気づかせてあげるから。冬の楽しさを君に目一杯教えてあげる。
僕の両口角は自然とにやりとあがった。
「ねーえっ。」
僕の体は木枯らしと共に前を歩く真っ黒の学ランに向かって直進する。
次の瞬間、鼻孔には冬特有の渇いた空気の匂いと大好きな君の香り。
「うわっ。」
びっくりする君の顔。
「ふふっ。」
冬の1番の楽しみ。
「冬じゃないとぎゅーって出来ないよ?」
だから冬は大好きなんだ。
君を1番近くで感じられるから。
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