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松半


1月も上旬、まだまだ寒い日は続く。寒冷前線はいつまで日本にいるつもりなんだろうか、早くどこか遠い国に行ってほしいものだ。いや、そもそもこの寒さの原因は寒冷前線のせいなのだろうか。理科は得意な方ではないからよく分からない。しかし、そんな俺にも分かることはいくつかある。例えば今なんか。どうしてこんな寒い中、しかも夜に俺は花火なんかをやっているんだろうか。しかも男二人でむさ苦しく。

「…なあ、松野?」

ぱちぱちと花火は眩しい光りを発しっている。ここだけ夏の香りがする。

「なに、半田。」
「なんで突然花火なんかに誘ったわけ?」

花火の光は赤から青青から緑、という具合に次第に代わっていく。その度に楽しそうに花火をやっている松野の顔がその光に照らせれてゆく。

「嫌だった?」
「は?…え、いや、別に…。いや、ではない、けど…」
「ずいぶん不満げだね。」

ぽっ、と松野の顔が暗くなった。花火が終わったらしい。松野はぽい、と焼けた花火をバケツに放り投げた。そしてまた新たな花火に手を伸ばす。

「…ね、火、ちょうだい。」
「火?…花火の?」
「うん。」
「いいよ、」

俺はそういいまだぽうぽうと明かりの灯っている花火を松野の新しい花火の先とくっつける。すると、移り火が松野の花火に点り先程と同じように綺麗な光を放ちはじめた。

「なんか、ね。夏休みが恋しくなって。」
「…松野でもそんなことあるんだ。」

松野の顔がまた彩りどりな色で染められていく。松野が失礼な、と言ったら調度よく赤に染まっていた。

「まあ、分からなくもなくなくないけど。」
「分かってよ。」

来年の夏は多分こんなことをしている場合じゃなくなるんだろう、俺達は。中二というのは実に嫌な立場だ。

「なあ、松野?」
「なに。」

移り火がゆらゆらと揺れていく。
大丈夫だよ、俺達なら、きっと。離れ離れになってもこの花火みたく共有した時間は本物だから。

「今度は夏にやろうな。」
「………うん。」

いつの間ににろうそくの火は消えていて暗い河川敷には俺らの花火だけが明るく灯っていた。




End



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