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天拓




(思いつき文)


「フォルテッシモ!!」

青い光りに包まれたサッカーボールが勢いよくゴールを決めた。

「キャプテン!」

夕方の河川敷、松風天馬と雷門中サッカー部キャプテン神童拓人の二人はサッカーの練習をしていた。

「ナイスシュートです、キャプテン!」

天馬はぱたぱたと洗い立てのタオルを先輩に手渡しながら賞賛の言葉を浴びせる。その言葉に拓人は「いや。」と首を左右に振った。そして、力無く天馬に笑いかけながら口を開いた。

「まだ、足りない…」

しかしそんな言葉を聞きながらも天馬の表情は目の前で暗い顔を浮かべている拓人とは打って変わって明るい。

「そんなことないですよ。」
「…え?」

天馬は手に持っていたタオルをふわりと拓人の頭に乗せた。拓人はその一連の動作と言葉に戸惑いの口を開いた。

「どう、いうことだ?松風。」
「キャプテンは、全然足りなくないですよ。そこに何も意味はありません。」

天馬はそう言うときゅ、と拓人の手を握った。その手はぽかぽか暖かく力強い。

「俺はキャプテンの笑ってる顔も怒ってる顔も、泣いてる顔、も、大好きなんですから。」

拓人の体はいつの間にかに天馬の香りに包まれていた。その香りに包まれるだけで自然と気持ちが落ち着く。安心できるのだ。拓人はその香りに黙って体を預けた。

「だから色んなキャプテンを感じれるんです。そしたら、キャプテン。もう、俺、お腹一杯ですよ。足りなくなんかないです。」
「松風…。」

拓人はそんな天馬の言葉にそれはお前だけだろ、と思いながらも体を天馬に擦り寄せる。

「ありがとう、松風。」

俺はまだまだサッカー選手としてもチームのキャプテンとしても力不足だけども、お前がいれば不足分も埋まる気がするんだ。

「キャプテン、大好きですよ。」

お前の暖かさが俺を強くしてくれるから。

「………ああ。」




End



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