Epilogue




「やはりというべきか……」

「これもひとつの答えだ。始めようじゃないか」



集会が行われる建物の最上階に位置する部屋にウノ、リャク、カノンが集っていた。そこには諜報部のボスはいない。リカはボスを辞退してボス代理と名乗っていた。自殺したツバサがかえってくると信じているのだ。不死の力を、ツバサ自身を信じて。



「やっぱりツバサがいないと寂しいなぁ……」

「オレは別にかまわんがな」

「……で」



ウノが笑い、リャクは舌打ちをした。ツバサのことか、あの少年を思い出しているのだろう。椅子に深く座り、目を閉じているカノンが黒いカードを取り出して机に置いた。話を始めろという合図として受け止められる。



「まあ、報告は朝方しておいた通りだ。空間転移が死んだため、以後、移動要員を統率するのはうちのサレンで構わんな?」

「異論はない」

「そうだな。これから頼むぞ」

「次だ。諜報部についてはリカとサクラが代理として纏める」

「ツバサがかえってくるといいんだがなぁ。組織の力が激減したし、あいつの情報量は尋常じゃなかったしな。ソラの保護者なのにな。一応」

「死んだ者に対して何を……。貴様はそれでも元軍人か」

「カノン、軍人であっても元は人間なのだよ?だから」

「歳上に対して説教か。ウノ」

「歳は関係がないだろう?」



ウノとカノンが静かに、しかし確実に互いは威圧感を放っていた。言い合いに収集がつかないといつもツバサが話題を変えていたのだが、この場合は仕方がなくリャクがそれを促した。



「貴様ら少し黙らんか」

「いつも不死と喧嘩をしているような輩に言われたくない台詞だな」

「なんだと死属性!」

「ふん」

「ッチ」



バチバチと電流が走るリャクの周囲は確かに彼の感情を表していた。



「あ、そういえば私はリャクに頼み事があった!」



人形の表情に変化はないのに声だけ格段に明るくなった。



「ソラを少しの間だけこの前にいた世界に行かせて欲しいのだ!リャクなら時空を曲げられるだろう?」




















「"呪い"……期限切れの生命の反応ね。やっと見付けたわ」



さざ波が絶えず響くその砂浜に、真っ白な服を身に付けた銀髪の女性が立っていた。肌は白く、目の透き通る蒼いそれは細くなる。
女性の頬が緩んだ。



「……ミソラ。殺しそこねた食べ残し」



この女性は「魔女」と呼ばれる高位魔術師だ。
同時に、記憶を喪う前のソラが常に殺したがっていた女性でもある――。



「早く殺しに行かないといけないわね」