信頼Reliance
「『命に結末を』ですか。そうしてツバサさんは……」
ソプラノの透き通る綺麗な声を唇からもらしながらシドレは呟いた。 ルイトに案内されてオレはシドレたちがいるという一階の応接室に訪れた。
シドレたち――。 シドレの他にいるのは2人。アイとワールだ。彼らの自己紹介によると普通の人に見えるのだが違うらしい。ルイト曰く、諜報部の問題児だそうだ。一見すればシドレは美少女だし、アイの表情はサングラスでなかなか見えない上変化が見えないがオレも人の事はいえない。ワールだって常に剣と刀を所持していること以外は普通だと思う。
「最期のことは気になりますが検索はやめましょう。ツバサさんは望んでいないはずです」
「……シドレたちはツバサの事どう思ってるの?」
「好きですよ。尊敬していますし、愛しています。それでしたら諜報部やこの組織の誰にも負けない自信があります」
「どうして、そんなに……」
アイとワールはシドレに任せているのか、何も喋らない。シドレは黒い手袋をはめた人さし指を己の唇の前に持ってきて笑った。
「内緒」
シドレの隣でワールが言って笑う。 オレの隣にいるルイトは静かにワールへ目を向けた。ワールはルイトに目を合わせる。
「知りたいなら自分で調べろ、新入り」
「……別にそういうんじゃなくて、よくツバサのこと受け入れられたなって」
「いえ、私たちは信じてるんです」
シドレが、笑ったまま、笑顔を貼り付けたまま言う。左側にだけつけた赤いリボンが揺れた。 なんだか、それがツバサと重なった。貼り付けた笑みが寒気を促し、金髪に混ざる異色が変だった。
「ツバサさんの死なんて受け入れていません。いつか帰ってきます」
――サラマンダー様は簡単には死なない。
確かにそう言う。 確信をもって。
そして、まただ。 サラマンダー、と。 ツバサ、なんて呼ばなかった。
「でも、まあ、あれだな。俺らのボスがいなくなったから諜報部は解散するんじゃね?んで、各々の街で情報屋でも……」
「え?でもリカが次のボスなんじゃないの?」
「リカは自分がツバサの立っていた場所に立とうとは思っていない。本人はボスの代理だと言ってる。まあ、ツバサが戻ってくるのを待つしかないな」
アイが彼らしい低い声でオレの問いに答える。
シドレはオレに話を聞かせてくれた事に対して礼を言うとテーブルの上にあるクッキーを手を指した。「お礼です。お持ち帰りください」と、やっぱり笑った。
「それにしてもやっぱり男装少女って萌えますね……!」
「はあ?つかそもそもソラって少女?」
「少女って感じがしないよな」
……なんか、変なことを聞いてしまった。
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